いろいろな白:ダチョウの卵のビーズの話
丸山淳子 彼女たちの首を彩るのは、美しく磨きあげられた白いビーズの連なりだ。白いビーズは、深い茶色の木の実や縞々模様のヤマアラシの針と組み合わせられたり、色とりどりのガラスビーズ、ときに、毒々しいまでに鮮やかなプラスチッ…
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丸山淳子 彼女たちの首を彩るのは、美しく磨きあげられた白いビーズの連なりだ。白いビーズは、深い茶色の木の実や縞々模様のヤマアラシの針と組み合わせられたり、色とりどりのガラスビーズ、ときに、毒々しいまでに鮮やかなプラスチッ…
丸山淳子 「おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に…」そんな昔話を聞いて育ったせいなのか、桃太郎の時代から、あるいは太古の昔から、男性と女性には、それぞれに役割が決まっていると、どこか思い込んでいた。男性は狩猟…
丸山 淳子 「そいつが来たら、ワンメタラ!ワンメタラ!ってやるんだって」と、電話口に、父さんの大きな笑い声が響いた。ボツワナのなかでももっとも辺境とよばれるカラハリ砂漠のはずれに、私が長年フィールドにしているブッシュマン…
丸山 淳子 あっと思ったら、もう遅かった。私のズボンが、まだらに濡れていた。当の本人は、一段と機嫌がよくなり、笑い声をあげている。周りの大人たちは、私が思わず上げた声に、ちらりとこちらを見たけれど、すぐにおしゃべりに戻っ…
丸山 淳子 ダオノアは、あまり話さない人だった。村の中心部にもめったに出てこなかった。毎日のように狩りに出かけ、そして仕留めた動物の皮を丹念になめして、きれいな皮細工をこしらえて、静かに過ごしていた。急激に変わる時代の流…
関口 慶太郎 カラハリの暑い昼には多くのひとびとが長めの休憩をとる。ある日、午前中の戸別訪問調査を終え、昼食を取りおえてしばらく経ったときのことである。助手とその家族は一番涼しい小屋の中で休憩している。空気が乾燥している…
丸山 淳子 「!」この記号が、単語の後ろについていたら、何を意味するだろう?そう、通称「ビックリマーク」といわれるように、強調や感嘆だ。私たちはごく日常的に使っている。では、単語の先頭についていたら…? 「!koõ, !…
丸山 淳子 「ジュンコは、役立たずだよ!」静かな話し合い輪から、突然、私の名前が聞こえてきたからビックリした。カラハリ砂漠のはずれに位置するブッシュマンの村で、この日はお葬式が行われることになっていた。私は、話し合いの輪…
丸山 淳子 「ワタシ、イキマス」。ようやく絞り出したのに、わたしの片言のガナ語は、きまって訂正されたものだ。「違うでしょ?わたしたちは行きます、でしょ?」ガナ語は、南部アフリカで話されているコイサン諸語のうちの一つで、ボ…
丸山 淳子 今年のカラハリは、例年にない大雨に見舞われている。砂漠と呼ばれる乾燥地域にもかかわらず、来る日も来る日も土砂降りが続き、きまって稲妻が光る。砂地にたたきつける雨音と天が割れるような雷音は、とりわけ夜に耳にする…
丸山 淳子 「最近、ガイ(野雁の一種)の罠を見に行っているかい?」さよならの挨拶を済ませて、立ち去ろうとしたときだった。追いかけるように、カワマクエじいちゃんが問いかけた。さっきまで、臥せったまま「自分はもう長くない」と…
丸山 淳子 カラハリ砂漠の昼は、木陰で寝ころびながら過ごすのが良い。ごろんと横になると、白い砂がやわらかく受け止めてくる。日なたにくらべると、木陰の砂は、すこしひんやりしている。さらさらと細かく、そして、パリッと乾いた砂…
丸山 淳子 照りつける太陽が、白い砂をじりじりと焼いている。ときおり吹く乾いた風が、黄ばんだ草をそよがす。カラハリ砂漠の長い乾季がやってきた。日中の暑さと乾燥に、私はうんざりして、木陰で休んでばかりだ。でもこの太陽と風こ…
丸山 淳子 「明け方、亡くなったよ。」朝起きると、そう告げられた。昨日の昼、娘が痛がっているから鎮痛剤がほしいと、彼女の父親が私に頼みに来ていた。彼女の病気がずいぶん重いものだということも、病院からもらったたくさんの薬を…
丸山 淳子 フィールドワーク中の私は、毎日が、なにかと忙しい。熱心なフィールドワーカーとでもいえば、聞こえはいいだろうが、正確には、貧乏性なのだろう。あれもこれも調べなくちゃと焦りばかりが募り、ちっとものんびりすることが…
丸山 淳子 六月。南半球に位置するカラハリ砂漠では、寒い季節を迎える。狩猟民として知られるブッシュマンも、絵はがきのなかでは、皮のふんどし一枚で原野を闊歩しているが、この季節、そんな格好じゃ、寒くてしかたがない。とりわけ…
丸山淳子 「ねぇ、このスカートおかしくない?」「ちょっと、そのヘア・クリーム、私にも貸してよ!」「こっちのTシャツがいい?それとも、あっちの赤い方がいいかな?」誘われて、薄暗い小屋のなかに入ると、喧しい声が耳に飛び込んで…
丸山 淳子 小さな手がのびてきて、「わたしにも、ちょうだい」と声が聞こえた。4歳くらいの少女が、大きな目を見開いて、わたしを見上げている。とたんに、おばあちゃんたちが顔を見合わせ、そして、手をたたいて大喜びした。 わたし…
丸山 淳子 緑の小さなノートとペン。ブッシュマンたちと過ごすあいだ、私はこの2つを手放すことはない。日々、直面すること、聞かせてもらった話を記すことは、調査生活の基本といってもいい。そうでもしなければ、私には、あの豊穣な…
丸山 淳子 「あれは、いかがなものか」「どう考えても、ありえないな」口達者なおじいちゃん達が白熱している。「だいたい、すごく急いでいるときに、先客がいたらどうするんだ?」「そうだ、そうだ、そこにしかないんだぞ。ほかではで…