カメルーン南部の森の中。日照りがきつい昼間を避けるべく、早朝、涼しい内に畑作業をおこなうことはよくある。ただし、Motivation(モチベーション、彼らはフランス語読みで「モチバッション」と言う)があるかどうかで、仕事の進捗は大きく左右される。屈強な男達にとって特に重労働となるのが、畑の伐開である。マシェット(山刀)一本で、二次林を開いていかなければならないからだ。しばしば見られるのが、近隣の友人達を呼んで一気に終わらせてしまうやり方である。
早朝から呼ばれる男達は不機嫌だ。そこで依頼主は「モチバッションだ」と小袋を渡す。それは、駄菓子屋で売られていた粉末ジュースの小袋に似ている。ここで配られるのはそんなものではない。中身は30ccほどのウィスキーである。男達は待っていましたと言わんばかりに、一口、二口で飲み干してしまう。朝食が出ないことが多く、寝起きの一杯はあっという間に体中にまわり、たちまちテンションが上がってしまう。そして、その高いテンションのまま仕事へと向かうのである。もちろん、途中でアルコールが効き過ぎて、ばてる者(特に私)も出てくるが、少なくとも最初の段階では「やるぞ」というモチベーションを与えてくれる。

伐開に向かう男達

カカオの実を割る共同作業

ヤシ酒で一服
今回のエッセイは「働く」というテーマだったのだが、若干、逸脱してしまったようだ。「働く」こととその前後で繰り広げられモチベーションの楽しみは表裏一体ではないだろうか。楽しみ過ぎるのもまずいが、楽しみがないと仕事は続かない。
さて、皆さん、そろそろ仕事終わりの一杯といきましょうか!!
注1 勿論、コートジボワール等で報告されているカカオの児童労働の問題は無視できないし、短絡的にカカオ労働が楽しいものであるというつもりはない。カメルーン南部は家族経営でカカオ生産がおこなわれており、コートジボワールなどの西アフリカ諸国と政治的、歴史的文脈が異なる。児童労働の問題については、例えば、キャロル・オフ著『チョコレートの事実』英治出版2007年を参照)。
注2 カメルーンの法律ではワイヤーを用いた罠猟は禁止されている。しかし、多くの人がタンパク源、現金収入の一部を獣肉に頼らざるを得ず、私は一概に禁止を主張できないと考えている。