アフリカにもいるYouTuber(セネガル)

池邉 智基

Facebookなどでセネガル人の友人とたくさんつながるようになってから、アフリカはセネガルにも「YouTuber」がいるということを知りました。日本でも最近話題になっているYouTuberは、動画配信サイトYouTubeにある自身の専用チャンネルを通じて、自らが制作した動画を掲載する人を指す言葉です。面白動画や商品のレビューなどを行い、趣味の域を超えて視聴回数で広告収入を得る人もいて、世界中でその熱は冷めることなく続いています。YouTubeだけでなく、Instagram、Vine、Facebookなどのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を利用して、様々な動画が公開・配信されています。面白い、興味深いと思えば「いいね!」ができ、他のSNSを通じて「シェア」することもできます。

私がセネガル人YouTuberの動画を初めて観たのは、Dudu fait des videos(http://www.tdofwaleu.com/Dudu/)というアカウントでした。ドゥドゥDuduという青年がYouTubeやVineを利用して、多くの面白動画を自ら制作して公開しています。端整な顔立ちでスラッとした体躯のドゥドゥはお洒落なシティ・ボーイに見えますが、動画の中では徹底的にマヌケ役(現地語でドフdof)を演じます。2分から3分の短い時間の中でドラマを作り、面白おかしく演出しています。

Dudu fait des videos -Le Polygame
https://www.youtube.com/watch?v=tBALTkm0fho
こちらの動画を紹介します。タイトルは「Le Polygame(重婚)」。彼女と甘いひと時を過ごしているドゥドゥは、他の女の子からメッセージを受け取ります。「おウチに来ない?」という誘いに乗ったドゥドゥは、一緒にいた女の子と別れると大急ぎでメッセージをくれた女の子のもとへいくのですが・・・。

関連動画を見ていると、ドゥドゥの他にも多くのYouTuberが少しずつ増えていることがわかりました。イタズラ動画を撮ったものや、パロディムービー、セネガル音楽のレビューなどがあります。それぞれの動画は再生回数がまだまだ伸びておらず、2万回再生でまずまずと言ったところです。日本では、YouTubeの広告収入は1回再生につき約0.1円と言われています。1万回再生されれば約1000円の収入になります。セネガルの企業が出す広告がどれほどのものかわかりませんが、YouTubeの広告収入はお金稼ぎの手段になりうるでしょう。

ドゥドゥはこのYouTuberの活動をきっかけにセネガルのテレビに出たり、ネットの記事に取り上げられたりと、注目する動きも多くなりました。これからセネガル国内のみならず、アフリカも含めた世界のクリエイターたちの仲間入りをするかもしれません。

アフリカでは携帯電話産業は留まることなく発展を続けています。調査を始めた2014年から、スマートフォンが広く使われているのを目にしました。iPhoneやSUMSUNGのGalaxyシリーズもありますが、それよりも安価な中国製スマートフォンも普及しています。「電話番号、持っているか?」という自己紹介のやりとりの中でも、しばしば「Facebook、やっているか?」と聞かれ、友達申請を受けます。スマートフォンはまだまだ高い買い物ですが、かなりの人が使っている様子を目にします。

スマートフォンを使う人々からすれば、SNSから生まれる新たなコンテンツは目につきやすいのでしょう。Facebookなどでシェアされる動画は友人間で共有され、さらにそれを観た友人たちが広めています。セネガル人の友人たちはSNSがとても好きなようで、際限なくシェアしています。シリアスな政治問題を扱ったものから、面白映像まで種々様々なものがタイムラインに流れてきます。

これまで動画コンテンツはテレビ局を通じて配信することが主流でしたが、スマートフォンの普及は大きな変化をもたらしました。パソコンが普及しインターネットのコンテンツも多様になった今では、誰でも動画を作って発信することができます。ビデオカメラを使わなくても、画質や音質にこだわらなければスマートフォンで撮影できるので、あとは編集してYouTubeやFacebookにアップするのみです。ドゥドゥたちのような「作る側」も比較的容易に動画を作れ、「観る側」もスマートフォンやパソコンを利用して動画を楽しめるようになっています。

これからも技術が発展していくにつれ、YouTuberのようなカルチャーが次々に生まれ、アフリカにもその波は届くでしょう。それを担うのは流行に敏感な若者であり、それをフォローしていくのも次世代の若者たちです。