同時代を生きる(会報第2号[2004年度] 巻頭言) 

荒木 美奈子

7月6日グレンイーグルズで主要国首脳会議(G8サミット)が始まったが、翌7日サミット開催を狙ったとみられる同時多発テロがロンドンで起こった。その衝撃は大きく、繰り返されるテロや戦争の前に、再度世界が怒りや悲しみの感情に包み込まれた。

G8サミットに先立ち、世界各地でロックコンサート「ライブ8」が開催されていた。今回のサミットではアフリカ支援が主要テーマとなり、対アフリカ援助の倍増や最貧国の債務帳消しの範囲の拡大などが焦点となることもあり、アフリカ支援を促すことを目的として「ライブ8」が開催されたのだ。

アフリカへの支援額をただ単に倍増することがよいことなのだろうか、アフリカに貧困 というイメージを植えつけていくことになるまいかなどといった懸念を抱かされたものの、20年前の「ライブ・エイド」に続き今回の主催者でもあるボブ・ゲルドフや「ライブ・エイド」時代から精力的に活動を展開しているU2のボノらが、音楽を通して語りかけ、現代の課題に取り組んでいこうとする姿勢とその息の長さに共感を覚える。

「ライブ8」でも演奏されたU2の名曲Oneに次のようなフレーズがある。

  One life
  But we’re not the same
  We get to carry
  each other
  One

私たちは同じではない。しかし、同時代を生きているという実感と時代の喜びや痛みを感じとる感性が彼らの行動の源にあるのだと思う。

AFRICのメンバーの多くは、フィールドワークを拠りどころとし研究や実践活動を行おうとしているが、アフリカの地でのフィールドワークにも通じるところがある。アフリカの村や町に住む。人と人との等身大の関わりを通して、多くの発見や学びがある。長期間滞在しても彼らと同じにはなれない、けれども、同じ時と空間を共有しているという確かな感覚が芽生えてくる。AFRICが産声をあげるまでの過程にも、産声をあげてからの活動を振り返っても、AFRICの活動の根源には、この「共存」感覚というか意識があると私は思っている。そして、その積み重ねと延長線上に、この一年は、タンザニアでの森林保全プロジェクト、研修・交流事業として日本での「アフリカ先生プロジェクト」やアフリカでの「日本紹介プログラム」などが具体的な形となって現れてきた。

どこにいようとも、時代の痛みや課題を感じとり、各自のできることをしていくことが、この不安や時に絶望感で押しつぶされそうになる時代においての「小さな希望」となるのではあるまいか。それは、「大きな暴力」の対極にあるもので、「大きな力」でも解決できない、唯一我々がもちえる力だと思うのです。