目的
「セレンゲティ・人と動物プロジェクト」(略してセレプロ)は、タンザニアのセレンゲティ国立公園の周辺で、人と動物が共存できる社会づくりを目指して、主に人材育成に力を入れて活動しました。
セレンゲティ国立公園は、100万頭のヌーが大移動することで世界的に有名です。壮大な景観と豊富な野生動物を楽しむために、年間30万人を超える観光客が世界中から訪れます。この国立公園は、ユネスコの世界遺産に登録されている人類の宝であると同時に、タンザニア政府にとっては外貨獲得源として国のドル箱でもあります。しかし、公園の存在は、地域住民の生活にさまざまな問題を生じさせています。観光利益のほとんどは外国人が経営する企業にもっていかれてしまい、地元には落ちてきません。村人は、車に乗って通り過ぎていく公園職員や観光客を別世界の人のように見ています。公園から出てきた動物たちは、畑を荒らしたり、家畜やたまたま出会った人間を襲ったりして日常生活を脅かします。公園として国に強制的に接収された土地の問題も、住民が納得しているとはいえません。現状は、「人と動物の共生」ではなく、動物と生きることを「強制」されています。野生動物が生息することのネガティブな側面ばかりが住民に押し付けられています。
このような状況を打開していくためには、地元住民が意見を集約して、国や国立公園管理局、国際自然保護NGOなどと交渉しつつ、自分たちの生活を創意工夫して改善していくことが必要です。そのために、まず求められているのは、村および公園をとりまく現状を理解して行動できる人材です。セレプロでは、地域生活の変革を担っていく人材を育成するために、教育機会・研修機会に対して奨学金を給付しました。
責任者紹介
責任者の岩井が初めてセレンゲティ国立公園に行ったのは1993年でした。初めは観光客として動物をみるだけのサファリ旅行でしたが、1996年からは調査として村に住み込んで人々と付き合っています。奨学金の給付は2001〜2013年まで実施しました。