2003年の6ヶ月間をエチオピア西南部の農村で過ごした。子どもの暮らしの変容に関する調査を行うためである。
私が滞在した当時のエチオピアは、学校制度改革の真っ只中(都市では完了しているらしかった)で、それまでの6−2−2制から、4−4−2制へと組み換えが行われている時期であった。私の調査していた村の学校では1年生から6年生まで在籍していたが、現在は、制度の変更を受け4年生までしか在籍していないものと思われる。調査時には579名が在籍していたこの学校では、町からやってきた8名の教員が教鞭をとっていた。
この学校を始めて訪問したときに驚いたことは、ひとつのクラスに子どもから大人まで、様々な年齢の人々が学んでいるということであった。エチオピアで定められている就学年齢は7歳だが、この年に入学した生徒181名の年齢は、8歳から26歳で、その平均は10.5歳だった。こうした年齢のばらつきは、各生徒の家庭の事情によるところが大きい。就学年齢でない生徒の例をあげると、
Aさんの場合:「家事や農業の担い手が他にいなかったので、学校に行かずいたが、弟が家事をできる年齢になってきたので、学校に通うようになった」
Bさんの場合:「子どもの頃に学校に2年間通ったが、経済的な理由で退学した。今は結婚して、経済的にも自立できてきたので、自分の子どもが大きくなる前に、もう一度学校で勉強しようと思って復学した」
Cさんの場合:「弟が学校に行きたい、と言い出し、父親が承諾したので自分も一緒に通うことにした。弟とは年齢が3つ違うが、同学年に在籍している」
聞き取りの結果を考えると、村の人々は「ある年齢に達したから」ということよりも、㈰学校に通いたい(もしくは通わせたい)ということと、㈪学校に通える(通わせられる)経済状況が整っている、ということから学校への入学が決定されているようだった。
都市部の学校では、各学年の生徒の年齢は比較的均一で、先生よりも年齢の高い小学3年生がいたりすることは稀だし、管理する立場から見ればとても効率的な教育が行えるのだと思う。しかし出入りが比較的自由な農村の学校生活も、各自の経済的負担を避けている分、持続可能な学校制度のようにも思えた。学校に通いたいと思う子供の多くが学校に通えるような制度を整える一方で、学校に通いたいと思う大人がこれからも学校に通えるような、休学・復学が容易に行えるシステムを残していってほしいと思うのは、外国人研究者のわがままだろうか。