サンダウェのネバネバおかず:ムレンダ (タンザニア)

八塚 春名

○月×日昼:ウガリ、ムレンダ、
○月△日夜:ウガリ、ムレンダ、
○月□日昼:ウガリ、ムレンダ・・・・

タンザニアのサンダウェの村で食事調査をしていた私は、毎日同じ家を周り「お昼何食べた?」「今何作ってるの?」とインタビューを行っていたが、帰ってくる答えの多くは「ウガリとムレンダよ」「またムレンダよ」、しまいには「ムレンダしかないわよ!」

ウガリ(右端)とニセゴマ100%のムレンダ(左端)。中央の二つはいずれもキャッサバの葉

ムレンダとはスワヒリ語でネバネバしたおかずを指す。町のムレンダにはオクラやナス科の野菜が入っておりとても豪華なのだが、私の村では野草か雑草のみ。乾期には乾燥保存しておいたニセゴマという雑草の葉100%の濃い緑色のムレンダ。ニセゴマは畑にたくさん生える雑草なので簡単に手に入る。たまにニセゴマと粉々に砕いたピーナッツやキマメ、牛乳を入れた黄緑色の豪華なムレンダも登場する。雨期になると多種の野草が手に入るためにムレンダに使う植物の種類が増え、ムレンダのバラエティが増える。でもやっぱり毎日ムレンダ。

作り方はとても簡単で、沸騰した湯に岩塩と食塩を入れ、ニセゴマの葉を入れてかき回すと、5秒後にはもう粘り気が出て出来上がり。主食であるウガリ(穀物の粉を湯で練った練り粥)を小さくまるめてムレンダを付けて食べるのだが、村に行って間もない頃は、ムレンダのあまりの粘り気に、毎回とても奮闘した。

でもこれがとてもおいしくて、特に私は雨期にだけ食べられる2〜3種類の植物が入ったムレンダが好きだ。そこにぶつ切りにしたキノコが入ったら絶品である。

基本的にムレンダはウガリのおかずで、白米のおかずではない。おそらく米を食べる時にはもっと汁気のあるおかずが必要なのだろう。しかし私はあまりに気に入って、米にもムレンダをかけて食べていた。

サンダウェの居住地域は降水量が少なく農業がそれほど盛んではない。彼らは主食となる穀物は自分たちで栽培するものの、おかずになるようなマメ、葉菜などは栽培していない。そのため、畑に勝手に生えてくるニセゴマや、村の周辺で手に入る野草は大切な食料である。彼らはムレンダをおいしい上に栄養があると言って高く評価している。もしかしたらサンダウェはマメや葉菜を栽培できないからムレンダを食べるのではなく、ムレンダがあるからマメや葉菜を栽培する必要がないのかもしれない。

村を去る前日、私はお世話になった人々の家をお礼を言って回った。その時、ひとりのおばちゃんが私に「私たちはハルナがとっても好きよ。だって、ハルナは私らの野草で作ったムレンダをおいしい、おいしい、と言って食べてくれるから」と言ってくれ、とても嬉しかった。

しかし、あのムレンダはきっと誰が食べても必ずおいしいと言うに違いない!と思う。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。