第4回アフリカ先生(津田塾大学)報告

第4回のアフリカ先生は、2005年10月24日に津田塾大学のオープンリサーチセンターで行いました。

エチオピア、ローカルNGOの活動現場から

森下敬子

開発援助の分野では世界中で多くのNGOが活動しており、NGOは特に、地域住民に密着した、草の根レベルの住民に直接裨益するようなプロジェクトが実施できると言われています。では具体的にはどのような活動をしているのか、今回の授業ではエチオピアのローカルNGOが実施した学校建設案件を事例として、プロジェクトの計画立案から実施までを紹介しました。

まず、エチオピアでNGO活動が始まった歴史の話をしました。エチオピアでは1970年代の大旱魃をきっかけとして、欧米の国際NGOが緊急援助活動を開始しました。その後も繰り返しおこる旱魃と内戦を背景に、欧米の国際NGOが増加していきました。1991年に民主政権に移行してからは、政治的安定と共にエチオピア人が設立したローカルNGOが増え始め、現在ではエチオピアで活動するNGOは794団体が政府機関に登録されており、そのうち637団体がローカルNGOです。また日本では、NGOに対して良いイメージがありますが、雇用吸収力の小さいエチオピア社会では、NGOも就職先の一つとして選択されているということ、先進国のドナーから援助資金を得られる「高い給料」のためにNGOを創設する人もいるということが、ローカルNGOの急速な増加の一因となっていることを話しました。

次に、エチオピアのNGOは具体的にどんなプロジェクトを実施しているのかを、写真を見ながら紹介していきました。例えば、給水案件では井戸を掘ったり、給水パイプを延長したり、ため池を造ったり、地域の特徴に合ったプロジェクトを実施しなくてはなりません。今回は、学校建設案件を例として取り上げますが、校舎一つをとっても、気候や手に入れられる建設資材、地域の経済状況を反映して、多様な校舎の形があるということを、写真と一緒に説明しました。

ここから、エチオピアのローカルNGOが実施した学校建設案件の具体的な話をしました。学校建設案件といっても、いきなり校舎の建設を始めるわけではありません。まずNGOスタッフが近くに学校がない村を訪問し、そこに住む人々と「学校はある方がよいか、なくてもよいか?」話をします。NGOスタッフが帰った後に、村の人々は会合を持ち、学校を作るべきか否かについて話し合いをします。「学校を作ろう!」ということで村の住民の意見が一致すれば、NGOを訪れます。ここでNGOスタッフは村の人々に、「1年間村の人たちだけで授業を続けてみること。1年後に授業が続いていれば、学校の建設費用を支援してくれるドナー団体を探す」という約束します。村の住民はNGOのアドバイスを受けながら、自分たちで木材を集めて簡素な教室2つを作り、村に住む農家の若者2人を先生として、授業を開始します。学校に通う子供の父兄は、1ヶ月1ブル(当時約12円)を月謝として先生に支払います。

1年後、その村では住民たちによる授業が続いていました。1年の間には、農作業が忙しい時期に生徒が来なくなったり、先生への月謝が払えない家族がいたりもしたそうです。たびたびNGOのスタッフが村を訪れてアドバイスをし、村の人や先生とコミュニケーションをとりながら、なんとか1年授業が続けられたということでした。

その後NGOはドナー団体から建設費用の支援を受け、今では2教室の立派な学校が建っています。先生も、地方の教育局が資格を持った教師を派遣してくれることになりました。

学校建設のプロジェクト一つをとっても、NGOは、ただ校舎を建設するというのではなく、そこに住む人々の意思を確認し、日々起こる問題を村の人たち一緒に話し合って解決しながら、プロジェクトを作り上げていっているという話をしました。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。