おしゃれして働こう!(ザンビア)

村尾 るみこ

ザンビアのある村の夜8時ごろ、ちょうどどの家もごはんを食べ終わる時間になると、各家の炉のまわりにはその家の家族だけではなく、隣り合って住む親族や近所の者たちも集まってくる。彼らはたいてい「ちょっと遊びに来たから、おしゃべりしよう」という目的でくるのであるが、なかには「頼みたいことがある」といって「仕事」をもちかけてくる女達もまぎれている。

ここでいう仕事とは、この地域で重要な現金収入となるイモを町へ運搬し販売するというもの。これは主に10代から30代の女性で、1人もしくは2人でおこなわれる。一回に販売したい量が多い、つまり一回で多くの現金がほしい場合には、親戚や友人など、だれか補助をしてくれる女性を探して「雇う」。それが親戚同士だと、お金ではなく別の機会に労働で返すことが許されるが、友人同士になると、依頼時に予め報酬等が決められる。

こうして女性たちは話し合いで「雇用条件」を決め、依頼を引き受け、町へ販売に行く日が決まる。すると翌日からは、近隣の親族同士で服を貸し借りしたりと、当日の服装を入念に検討する。例えば、「ねえ、あの緑の花の服を貸してよ」「靴がない、この間誰にかしたっけ?」「髪を編みなおして」「川で水浴びしてこなきゃ。あ、石鹸がない。じゃ、買ってきて。いや、イングトゥ(筆者)に借りてきて!」(→筆者はあわてて隣人宅へ退散)・・といった具合である。

当日の早朝5時、薄明かりのなか、彼女達はワセリンをしっかり足と腕にすりこむ。そして30キロにもなるイモが入った桶を頭にのせて、10キロ先の町へと力強く歩き出す。そうしておしゃれを決め込んで、重いイモを頭にのせながらも楽しくおしゃべりしながら歩く女性たち。こうしたおしゃれを楽しむ女性のパワーは、「現金獲得」「雇用条件」と並んで村の人びとの生活を支えるているのだ。