カメルーンのバイク事情(カメルーン)

安田 章人

カメルーンで、市民の日常的な移動手段といえば、タクシーである。南部に位置する首都ヤウンデには急な坂道が多く、市民は皆、黄色い乗り合いタクシーを日々の足としている。(ただし、最近、中国からの援助で、路線バスの運行が開始された。)

しかし、これが北部に行くと、黄色いタクシーをほとんど見かけることはなくなる。代わりに目につくのが、バイクである。北部では、バイクタクシーが市民の足となっているのである。北部に行くとバイクタクシーが増える理由は、おそらくナイジェリアのせいであろう。カメルーン中央部のアダマワ州や北部州は、南部の首都に比べて、西隣の国ナイジェリアとの距離が近くなる。ナイジェリアには、なんとホンダの工場があるように、たくさんのバイクが流通している。北部では、わざわざナイジェリアでバイクを買い付け、カメルーンで売っている商人もいるくらいである。街中を走っているバイクは、ホンダばかりではない。むしろ、ホンダは高級車で、約70万セーファ(10万円強)もする。そのため、バイクタクシーとして使われているのは、DragonやNanfang、金城(ジンチェンと読むらしい)、Qlink(Oにみえるロゴが前についているので、現地の人はオクリンと読んでいた。Kは仏語のため読まない。)というメーカーの、50や125ccバイクである。御察しの通り、中国系のメーカーである。「系」と書いたのは、ネットで調べてもどうもよくわからないためである。Qlinkは、アメリカにも進出しているようだし、Nanfangはヤマハと、金城はスズキと提携しているらしい(本当かどうか)。しかし、やはりこれらのバイクの評判はよくない。ホンダの半分の値段で買えるが、エンジンがすぐに壊れるため、誰しもできればホンダを買いたがっている。しかし、バイクタクシーをはじめるのにそこまで初期投資はできないため、安い中国系のバイクのなかでもさらに中古を手に入れ、商売を始めるという。

フィールドワークの相棒。マスクは砂埃のため。

こうして、中国系のバイクの悪評を書いた私も、実はフィールドではお世話になってきた。道が悪く、車が入るには困難で、もちろんバスもない地域で調査をおこなうには、バイクが最高の移動手段となる。私が乗っていたQlinkの50ccもすばらしい調査の相棒だった(手のひらを返したように笑)。街に買い出しに出かけたり、隣の村に聞き取りに行ったりするのに重宝した。10ヶ月の調査後、お世話になったホストファーザーに、ほぼ新品のこのバイクを3分の1以下の値段で譲ると、とても喜んでいた。(「タダでやれよ」というツッコミは勘弁していただきたい笑。当時、首都に戻るために金欠だったので。)

年明けにカメルーンに渡航する予定だが、今回は奮発して、ホンダを購入する予定である。これからも長く使うためというのも理由だが、正直、サバンナを疾走する気持ちよさに魅入られてしまったためというのもあるのだ。みなさんも、是非、アフリカを訪れた際は、広い大地をバイクで走ってみてはどうだろうか?もちろん、安全運転で。