新たな世代で担うダンス (アンゴラ)

村尾 るみこ

砂埃が舞う、王の継承の儀式で、若い女性たちが登場する。
王の玉座の前で、着飾った女性が、激しくステップを踏むたびに、
また砂埃が舞い上がる。

儀式でダンスをする若い女性たち

 

アンゴラ東部の小さな町で、40年ぶりに新しい王が就任した。
人口が少なく、アンゴラで名の知れた王国とはいいがたいが
、 戦争でしばらく途絶えた王位の継承が、戦後8年を経てようやく実現していた。
私が訪れたのは、それからさらに4年たった夏のことであった。
私が小さな町についたとき、一緒に来た知る人知らない人が口々に言い合っていた。
「王の祭りをみにきたのだな?」と。

町を歩いて王に挨拶にいく。その道すがらだった。
女性たちが集まって、ダンスの練習をしている。
なかでも若い女性3人が、年長の女性たちに囲まれて、手ほどきをうけながら踊っていた。
木の陰からでてきて、ステップを踏みながら前後に移動する。
その動きは、肩を揺らさず、腰と足を使って、ややうつむき加減にしなければならない。
次の日も練習をするというので、また来る約束をした。そして、翌日は私も練習にまぜてもらったが、やはりかなりハードなものだった。

いよいよ当日、王の継承の儀式が始まり、王が入場すると、
様々なダンサーが王の前に登場する。
王宮への侵略者を防ぐ男性の踊りに続き、
私が練習をみていた、若い女性たちの踊りが始まる。

長いドラムをたたき、若い女性3人と、囃子役の女性が入ってくる。
3人の女性は並んで足でステップを踏む。練習を積み重ねた3人は、息ぴったりで、王に少しずつ近づく。そして玉座の前までくるとまた少し下がった場所で踊り続けた。
そして王に挨拶をして、次のダンサーにバトンタッチする。

次のダンサーは、体と顔に白の斑点模様をつけた、小さな女の子たちである。
先の3人の女性たちが練習しているとき、その横で、踊っていた女の子たちだ。
彼女たちも立派に踊りを披露して、また次のダンサーにバトンタッチがなされた。

3人の若い女性は、戦後、赤ん坊のころに避難先の隣国から帰還した人びとであるし、また、
最後に登場した小さな女の子たちは、みな、戦後のアンゴラで生まれた子どもたちである。
戦後復活した儀式での彼女たちの立派な活躍ぶりは、
とってもたのもしくて、陽に映える砂埃とともにまぶしくみえた。