アリの村の子育て(エチオピア)

鈴木 郁乃

私が半年ほど居候させてもらっていた村は、エチオピア西南部の標高2000メートルほどの場所に位置しています。村に暮らす殆どの人々が農業で生計を立てている、アリ人です。


母と子

 

私がお世話になっていたご家庭には、下は6ヶ月から上は14歳までの合計6人の子どもがいました。両親が畑仕事に出ている間、上の2人の子どもは学校へ行ったり、農作業グループに参加したりします。一方、その下の3人は留守番をしながら、一番下の赤ちゃんの面倒を見ます。私が彼らと一緒に生活し始めた時に思ったのは、ここの人々(子どもからお年寄りまで)は本当によく働くなぁということでした。

この村の人々には、子どもにも大人にも年齢や性別に応じた「仕事」があります。先に述べたような子守は、小さな子ども(主に娘)の仕事で、水汲みや薪拾いも家の周辺でできるならば同年代の子どもがします。6歳ぐらいになると、鎌や手鍬を使った農作業を始め、娘には食事の準備、息子には家畜の世話なども徐々に任されるようになります。


農作業

 

もっと年齢が大きくなると、さらに複雑で体力や技術が必要な仕事、例えば牛耕(男性)、家屋の建設・修繕(男性)、主食作り(女性)、牛糞を家屋の床に塗る作業(女性)などに従事していきます。これらのことが一通りできるようになると、結婚や独立し、家庭を持てるいわば一人前として扱われるようになります。

私の見聞きした限り、村の子どもたちは誰かに「子育て」されて大きくなるというより、「仕事」を通じて大きくなっていくようでした。子どもたちはさまざまな仕事を通じて、様々な知識や技術を経験によって手に入れていくのです。つまり、「仕事で育つ」ことがアリの人々流の「子育て」なのかも知れません。


マーケットにて