祭りの楽しみ方(ブルキナファソ)

石本 雄大

サヘル地域,ブルキナファソ北部にあるタマシェクの村でのこと。

乾いた大地に手拍子が響く。30人ほどで輪を作る女性たちの刻むリズム。手を叩くたびに頭を下げ,腰を折り,かがむ。幾多の手が発す音は重なり,身体の動きと共鳴し,空気を大きく揺り動かす。


手をたたき輪を作る女性

そこには,青,紺,あさぎ,緑,黄緑,赤,淡紅,橙と色があふれ返る。おろしたての服の色彩はおうど色の砂の大地に映え,ぎらぎらと照りつける太陽に負けず目の奥を刺激する。

突然,ひとりの女性が叫び声をあげる。その叫びが呼び水となり,皆,一心不乱に手を叩く。力を絞りきった女性が口を閉じた後も,輪からは音が立ち昇りつづける。


手をたたき輪を作る女性

輪の内側では男性が踊る。片手を挙げ,手拍子に合わせて足音をたてながら,ステップを刻む。この踊りの舞台となる輪の中には1人もしくは2人しか入らない。そのため踊り手は,輪を作る女性やその周りを取り囲む男性の視線を一身に浴びることになり,踊りの場は若者にとって晴れ舞台となる。

彼らが最も頭を悩ますのは,意中の人に自分をいかに印象付けるかである。輪に入る直前には手鏡を見つめ,木炭のアイシャドーが上手にぬれているか,上着が程よく肩にかかっているか,ターバンの輪郭は乱れていないかなど,身なりを細部まで整える。10歳代後半,踊りに参加したばかりの青年は,表情を固くしたまま目当ての女性の前に歩み,黙々とステップを踏む。張り詰めた空気の中,彼は息をつくこともできず輪を退出する。ところが,20歳代中盤の男性が踊り手として現れると,場の雰囲気は一転する。粋に踊りつつ,その合間に年配の女性と軽口を叩き,目当ての娘の耳もとでささやく。悠然と輪の中を一周し,彼は余韻を残して去っていくのである。


踊る男性

この華やかな場にあこがれてか,時折,男の子が乱入する。隙をうかがい,踊り手の切れ間に5,6人で徒党を組んで輪になだれ込むと,もがくように全身を動かす。しかしそれは一瞬で,怒り顔の若者に追われた彼らは,あっという間に舞台の外にはじき出される。


突撃男の子

こういった催しは,イスラムの断食開けの祭り,犠牲祭,結婚式,命名式などめでたい場で行われる。そこでは若いエネルギーがほとばしり,朝食後に始まった踊りの場が,真夜中まで続くこともある。

では,踊ることのない老人たちにとって祭りは退屈なものかというと,そんなことはない。輪から離れた木陰もしくは家の中で彼らはお喋りに花を咲かす。この日にあわせやってきた遠方からの客を交え,親戚たちの近況,若者の出稼ぎ先の情勢・景気,農作物・牧草の状態などさまざまな情報を集めつつ,近頃あった面白い小話などを語る。そして,ご馳走であるヒツジ・ヤギの肉,バターをふんだんに使ったササゲめしを腹いっぱい食べ,たっぷりと砂糖の入った茶をたらふく飲み,疲れたら一眠りし,その後また会話に熱中するのである。