第28回アフリカ先生「法政大学人間環境学部」報告

「サバンナで野生動物と暮らす−タンザニア・セレンゲティ国立公園−」
「誰のための自然保護か?−地域住民による動物を取りもどす試み−」
(2008年9月27日、10月4日)

岩井 雪乃

この講義では、アフリカの自然保護を題材として、アフリカの現状を伝える一方で、日本に暮らす自分たちが様々な先入観や固定観念を持っていることに気づいてもらうことを目的としました。

第1回では、アフリカの国立公園の観光客の豪華な滞在ぶりと地元住民の生活のコントラストを示しつつ、「自然保護」が住民生活にもたらす負の側面を4つ提示しました(狩猟の禁止、土地の収奪、観光利益の不平等な分配、農作物被害)。自然保護は、ステイクホルダーの利害関係がせめぎあう場であり、その中でも声の小さい地域住民に負の影響が集中する構造を解説しました。

第2回では、ゾウに襲われるケニアの村の映像を見せて、「かわいいぞうさん」が住民にとってはいかに恐ろしい存在か、という臨場感をもってもらいました。その上で、早稲田大学で実施している学生ボランティアプロジェクト「エコミュニティ・タンザニア」の活動を、メンバーの学生から紹介してもらいました。ゾウによる農作物被害調査→ゾウ・パトロールカー寄贈→車の事故→管理体制の確立という3年間の流れと、その間にあった村人との葛藤が語られました。

また、同年代の学生が、タンザニアの現場で気づき、学んだ体験は、履修生の心に響いていました。

早稲田大学人間科学部4年真柴さんからは、
現地での生活体験から、自分も自然の循環の中で生きる存在であり「私も動物」だと改めて気づいたこと。「現在の生活レベルを落とせない」という二酸化炭素削減の議論に対して、「生活レベルを落としても生きることができる」という実感を得た。ということが語られました。

早稲田大学国際教養学部4年杉浦さんからは、
ボランティアとして与えるつもりで行ったのに、実は与えられるものが多く、双方向な関係が生まれていったことから、「ボランティアはコミュニケーションのひとつ」という定義に至ったこと。脅かされる住民の生活を見たにも関わらず、美しい自然を守りたいと思ってしまう自分に対する葛藤、が伝えられました。

土曜日の午後に、あえて選択履修して集まってくれた意欲的な学生たちだったので、200人という大講座でも話しやすかったです。履修生からの感想では、「専門家ではなく、同じ大学生がアフリカまで行って行動していること」に刺激を受けて、「自分も何かしたい」と書いてくれた学生が多かったです。「体験至上主義の行動力はすばらしいと思う」という表現もありましたが、私たちアフリックのフィールドワーク・現場・体験にもとづいた思考のあり方は伝わったかと思います。

アフリカの問題を「自分の問題」として引きつけて考えてほしいと思っていましたが、ある程度成功したと思える以下の感想もありました。「もっとも罪深いのは、今ここで美しい目をしたゾウが処分されるのを他人事のように悲しんでいる私を含めた先進国の人間ではないだろうか。」

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。