第28回アフリカ先生報告

「タンザニア農村における植林活動の歴史的展開」             (2008年11月29日法政大学人間環境学部)

黒崎 龍悟

サハラ以南アフリカ諸国では、少なくない地域において環境保全、エネルギー問題という観点から植林活動の重要性が当該国政府や開発援助機関によって強調されてきました。本講義では、私がこれまでの調査研究で得た知見から、植林活動を含む開発を考える際、それを推進する側が、どのような点に留意する必要があるのかについて提示することを目的としました。

植林を推進する政策やプロジェクト等は、かつてのトップダウン型に代わって住民の意向を計画に反映させようとする住民参加型の手法を取り入れるようになっています。しかし、そうした手法を用いた取り組みを評価する段階では、アンケートや統計的分析が重視されているために、手法の妥当性が正確に検証されていない/地域社会の実態が正確にとらえられていない可能性があります。植林を推進する開発を、より地域住民にとって有効なものとするためには、この評価の段階でも住民の視点に立つことが不可欠といえます。

本講義では、タンザニア南部の農村を事例に、まず、これまでに同地で歴史的に複数の植林プロジェクトが実施されてきたことと、それらが地域社会にどのように影響していったかを示しました。次にそうした影響が社会経済的な変化や、個人レベルの生活に生起するさまざまなイベントをきっかけとして住民の自主的な植林活動につながる可能性があることを述べました。このことから統計分析による評価の限界を述べると同時に、住民の生活に立脚した視点から、植林活動がどのように地域社会に取り込まれていくかを、長期的視点にもとづいた実証的調査によって明らかにすることの重要性を述べました。

こうした調査による評価の重要性がわかっても、手法にフィードバックすることは容易ではありません。しかし、少なくとも植林(開発)を推進しようとする外部者にとっては、それが住民にとって生計を営むうえでの選択肢のひとつになるに過ぎず、また、すぐに目に見える成果につながるとは限らないという認識のもとに関与することが重要であると提起して終えました。

具体的にどのような方法で調査をすればよいのかといった意見がありましたが、残念ながら確立した方法はなく、実証的な事例研究をつみあげるなかで知るしかないというように答えました。また、植林は開発援助のなかでもメジャーなトピックですが、実際、話を聞く機会が少ないようで、植林の話を知ることができてよかったという感想を多くいただきました。