第11回アフリカ先生

2006年4月15日にNGO「キ・アフリカ」のアフリカ講座にて行いました(於:女性センターブーケ21・東京都中央区)。

「ヌーが走る村に生きる−タンザニア・セレンゲティ国立公園と村人のこれまでこれから−」

岩井雪乃

「キ・アフリカ」は、ケニアやタンザニアに渡航した経験のある40−50代の方々を中心とした団体です。毎月1回アフリカ講座とスワヒリ語講座の2本立ての定例会を実施しています。

セレンゲティには100万頭のヌーが生息する

セレンゲティ国立公園に隣接するロバンダ村は、タイトルのとおり、ヌーが季節移動する時期になると、村の中をヌーが走り抜けていきます。畑の収穫が終わって、ちょうど男たちの仕事がなくなる時期に、ヌーは村に移動してきます。村人は、このヌーを「神が我々に与えてくれた財産」として狩猟し、肉、内臓、骨、皮まで余すところなく利用してきました。

しかし、そんな動物との共生が成立していた時代は過去のものとなりました。1950年代にセレンゲティ地域が国立公園に指定されると、彼らが使える土地は半減し、狩猟も禁止されていきます。現在も続く「国際的に貴重な野生動物」という自然保護の価値観がもたらす、住民への強制、暴力、権利の剥奪。これらによって、かつては村人の資源だった野生動物は「国家の財産」となって利用できなくなってしまいました。

観光利益の分配格差、野生動物による農作物被害など、村の生活はさまざまな問題を抱えています。しかし、人びとは、フォーマル・インフォーマルな戦略を駆使して野生動物と土地を取り戻そうとしています。そんな村人の試みを紹介しました。

テント暮らしのフィールドワーク

発表の中では、私がアフリカと関わるようになったきっかけや、村人とのエピソード、研究を続ける思いなども話しました。生活も文化も異なる彼らから、人間として大切なことをたくさん教わりました。彼らのシンプルな生活を知ってからは、モノを買わなくなりました。アフリカを知ることは、自分の生活を省みることにつながります。遠い世界の話として受け取るのではなく、自分に引きつけて考えることを伝えました。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。