第9回アフリカ先生

2006年2月9日に学生団体「Tunapenda Africa」のアフリカ学習会にて行いました。(於:富士国際旅行社・新宿区)

「野生動物と暮らす−タンザニア・セレンゲティ国立公園と村人のこれまでこれから−」

岩井雪乃

Tunapenda Africa」は、アフリカが大好きな学生が異なる大学から集まって活動している会です。講師を招いて学習会を開いたり、イベントを開催したりしています。

かつての狩人

今回のアフリカ先生では、参加者同士が意見を出し合うワークショップ形式を取り入れました。前半では、「野生動物と人間の共存の実態」を現場の具体的な事例から紹介して、住民が抱えている問題を提起しました。後半では、4つのグループに分かれてどんな解決策が可能かを話し合ってもらいました。

多くの日本人にとってアフリカといえば、まず浮かぶのは「野生の王国」のイメージでしょう。確かにアフリカには広大な動物保護区があって、貴重な動物が多数生息しています。しかし、そこには、動物だけでなく人間も暮らしています。アフリカの動物保護の歴史を遡っていくと、「野生の王国」はもともとあったわけではなく、植民地時代に白人によって作り出されたものであることがわかります。

タンザニアのセレンゲティ国立公園に隣接するロバンダ村の人びとは、50年前は公園の中で生活し、あたり前に動物を狩猟して生活していました。しかし、1959年に国立公園ができてからは、彼らが使える土地は半減し、狩猟も禁止されています。現在も続く「国際的に貴重な野生動物」という自然保護の価値観がもたらす、住民への強制、暴力、権利の剥奪。これらによって、かつては村人の資源だった野生動物は「国家の財産」となって利用できなくなってしまいました。その一方で、近年増加する公園から出てくるゾウによる農作物被害は深刻です。また、観光収入は政府や外国企業に入ってしまい、村人のもとにはなかなか届きません。

最大の有害獣であるゾウは、同時に村人の神でもある

後半では、4つのテーマ(土地、狩猟、観光利益の共有、野生動物による被害)に関して村人ができるアクションは何かを考えてもらいました。どのグループも、住民の気持ちになって、さまざまなアイデアを出してくれました。

結局、どのテーマも模範解答はありません。「住民の権利として当然じゃないか」と思えることでさえも、利害関係者の思惑や西欧の自然保護のまなざしによって、阻まれてしまっているのが現実です。でも、村人もやられっぱなしで動物資源や権利を奪われているわけではありません。最後の部分では、村人が試みている合法・非合法を含んだ多様な生活再編の試みを紹介しました。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。