第6回アフリカ先生(富山大学)報告

第6回のアフリカ先生は、2005年12月8日に富山大学人文学部で行いました。

文化人類学概論;エチオピア編

森下敬子

今回は、富山大学人文学部の「文化人類学概論」を受講している大学生を対象に、エチオピアの生活や文化についてお話しました。少しでもエチオピアに興味や親しみを感じてもらえるように、写真やビデオで実際の映像を見てもらったり、私が体験した具体的な話や、エチオピアと日本の意外な共通点の話をしました。

アフリカ大陸の東に位置するエチオピアでは、日本の約3倍程の面積に7000万人の人が生活しています。約80の異なる民族から成る多民族国家で、民族が異なれば、言葉はもちろん、衣服や髪型、食べ物なども違います。アムハラ、ティグライ、オロモ、ソマリ、アファールなど異なる民族の人々の写真やビデオ映像を見てもらったり、民族衣装を回覧して、学生さんに実際に手にとってその違いを見て頂きました。

エチオピアの特徴として、ギィーズ文字という文字を持っていること、「エチオピア暦」という独特の暦で年月を数えること(アフリカ便り「エチオピアのお正月〜エチオピア時間のはなし」参照)、エチオピア正教という独特のキリスト教があることなどを話しました。

エチオピア正教会の聖職者たち

エチオピアはコーヒー豆の産地としても有名で、日本で売られている「モカ」の中にエチオピア産のものがあります。エチオピアの家庭では来客の際などにコーヒーセレモニーを行うのですが、コーヒーの白い生豆を炒るところから始まるので、コーヒーがお客に出されるまでに1時間くらいかかります。日本の茶道と似ているかもしれませんが、もっとより生活に密着したものです。

日本とエチオピアの意外な繋がりとして、テレビドラマ「おしん」の大ヒットがあります。私が首都アジスアベバのエチオピア人の家庭で居候していたとき、夕方テレビで「おしん」が放映される時間になると、近所の人たちがワラワラと集まり、真剣にドラマを視聴し、泣き所になるとみんなで静かに涙を流して観ていました。私が道を歩けば「おしん、おしん」と連呼されました。「おしん」の他に人気があるのが、日本の演歌です。首都アジスアベバのピアッサという町の中心地では、CDや音楽のカセットテープが売られているミュージックショップに、美空ひばりや細川たかしなどの演歌の音楽テープもあります。エチオピア人には日本語の歌詞が分からないので、カラオケ用のテープが人気です。タクシーに乗って演歌の音楽をかけられて、「川の流れのように」や「北酒場」を歌ったこともあります。エチオピアの歌謡曲もどことなく演歌調なので、日本人と感覚が似ているのでしょうか。

授業後、学生さんに記入していただいた感想に、これまでエチオピアに対して「飢餓」や「貧困」のイメージしかなかった、というものが多くありました。ステレオタイプなイメージだけではなく、普通に暮らしているエチオピアの人々のことや、面白いことがたくさんあるということを、伝えることができればいいいなと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。