エチオピアのお正月〜エチオピア時間のはなし〜 (エチオピア)

鈴木 郁乃

数年前のお正月をエチオピアの農村で迎えました。大晦日の夜にはラジオでは一年を振り返り、エチオピア正教の司祭の祈りが伝えられ、元旦には、滞在先の子供たちが、部屋の床に刈りたての青草を敷き詰め、装飾用に花を生けてくれました。

新年が新しい洋服やご馳走など、いつもと違うワクワクした気分に包まれるのは、私のお邪魔していたエチオピアの小さな農村でも、日本でも同じ。違うのは、私に馴染み深いお正月は1月にやってきて、彼らにとっての新年は私たちのカレンダーでいうところの9月にやってくるところ。冒頭に書いた、私の過ごした「お正月」とは、エチオピア暦1996年の年頭のことで、西暦に置き換えると2003年の9月のことなのです。エチオピア暦と西暦には約8年のズレがあるため、2006年の今は、エチオピア暦の1998年となります。また、エチオピアのカレンダーでは、1年は30日ずつに分けられ、12ヶ月では足りない5〜6日は13ヶ月目にカウントされます。そのため、エチオピアの1年には13の月が存在します。ある意味、1ヶ月が30日だったり31日だったり、28日だったりする西暦よりわかり易く、論理的かもしれません。

さらに、エチオピア時間では朝の6時から一日が始まります。例えば、学校はエチオピア時間の3時から始まります。これは、私たちの時計でいうところの午前9時。ある時、調査を手伝ってくれていた隣村在住のアシスタントに「じゃあ明日は4時頃に来るね」と言われ、「いつもは午前中に来てくれるのに、明日はずいぶん遅くに来るんだなぁ。畑が忙しいのかな?」と内心思っていたところ、彼は翌朝の10時半ごろに現れたのでした(ちなみに、スワヒリ語でもこれと同様に時間を表記するそうです)。そんな失敗を繰り返した後、私は西暦とエチオピア暦の換算表をノートに手作りし、腕時計はヨーロッパ式に表現されたエチオピア標準時に、置時計はエチオピア時間に合わせて生活するようになりました。二つの時計の示す時間に翻弄される私とは対照的に、村の人々は(子供たちでも)時計やカレンダーに頼らずに、空の明るさや作物の成長や天気によって、時間や季節を言い当てることができていました。そんな彼らの時間認識能力の高さが、私にはとても羨ましく思えました。

さて、20世紀にやり残したことのある方に朗報です!エチオピアは今年の9月に1999年が始まりますので、今からでも20世紀最後の思い出づくりに間に合います!

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。