第33回アフリカ先生報告「Esso小学校(カメルーン共和国ヤウンデ市)」

「森の民バカの文化 (Culture of the Baka People in the Forest)」
(2009年3月13日)

服部 志帆

2009年3月13日午後、カメルーンのヤウンデ市内にあるEssoの小学校でアフリカ先生をしました。受けもった二つのクラスは、9から11歳の子供たちが対象の英語のクラスでした。授業のねらいは、彼らと同じカメルーンに暮らす狩猟採集民バカ・ピグミーの文化について理解を深めること、森とバカ・ピグミーの文化を保全していく必要性をいっしょに考えることです。

教室に電気が通っていないこととスライドを映すためのスクリーンがないことが直前にわかり、慌てて長い長い延長コードと白い布を市場へ買いに行ってもらいました。ほかにもプラグがとけてしまうというアクシデントがありましたが、なんとか授業を始めることができました。自己紹介のあと、スライドを使いながら、質問形式でバカの生活を紹介していきました。子供たちは、初めて見る森の動植物たちやそれを巧みに利用するバカの様子に見入っていました。スライドは、子供たちの好奇心を刺激し、質問の嵐を呼びました。勢いよくまっすぐに手を挙げ、「なぜ、バカは野生動物を食べているのですか?」、「なぜ、バカは森にすんでいるのですか?」、「なぜ、バカは都会に出てこないのですか?」、「バカは車に乗りますか?」、「バカの宗教は何ですか?」、「バカが私たちにとって重要なのはなぜですか?」、「動物を食べると、どうして特別な病気になるのですか?」などなど、次々と質問が飛び出してきました。質問に答えているうちに、またたく間に時間が過ぎました。最後に少し慌てて、伐採や新たに始まった自然保護プロジェクトによってバカの生活や文化が危機的な状況に追い込まれていることと、バカが森とともにいつまでも暮らしていけるように、森と一体になって暮らしてきたバカ・ピグミーの生活や文化を考慮した開発や自然保護を考え直す必要性があることを述べました。

私にとって今回のアフリカ先生は、カメルーンで行う初めての授業でした。また、英語で授業をするのも初めてだったので、どうなるのやらドキドキしながらのぞみました。しかしそのような心配はさることながら、とても楽しく授業を終えることができました。子供たちの素直で元気な様子に励まされたのです。なかでも、授業のなかで子供たちが正解を出したときにする”Clap your hands!”(軽快なリズムの拍手で正解者をねぎらうもの)には、心が躍りました。「バカにとって最も大切なものは何ですか?」という質問に対して、子供たちが声をそろえて”forest”と答え、その後みんなでやった拍手は、次回のアフリカ先生へつながりそうです。カメルーンの都会で暮らす子供たちが、バカに対する差別や偏見を持たないようになり、将来バカが森といっしょに暮らしていけるように、小さな種をまく機会を持てたことはうれしいことです。アフリックのメンバーが、アフリカ先生の活動の舞台を調査国をはじめに海外へも発展させ、それぞれの経験や調査をもっとグローバルな形で展開していけるようになったらいいなと思いました。