アフリカの自然と人を考える−タンザニアの半乾燥地域に暮らすサンダウェの生活−

八塚春名

10月18日

まず初めに自己紹介として私が今の研究をするに至った経緯(高校生の頃から自然保護に興味があったこと、大自然に憧れていたこと、実際にアフリカに行ってからは自然環境よりもそこに暮らす人の生活に興味が移っていったということ)をお話しました。次に、環境教育公開講座としては4人目の講師ですが、アフリカの話は今日が初回だったので、まずはアフリカの地図を見せながら、「アフリカ」と一口に言っても多様な自然環境の下、様々な民族がそれぞれの暮らし方をしているということを話し、これからの全9回の講義から、その多様性を学んで欲しい、とお願いしました。

東アフリカに位置するタンザニア共和国の中央部にはサンダウェという人々が暮らしています。彼らの居住地域は一年間の降水量が西宮の約半分で、半乾燥地域と言われる地域です。サンダウェはそこで食料、家、日用品などさまざまなものを自然の素材を利用して自分たちで作っています。授業では、サンダウェの生活を知ってもらうため、彼らの食べ物を中心にたくさんの写真を見てもらいました。また、実際にサンダウェが栽培している作物(モロコシとトウジンビエ)や、彼らが好むバオバブの実を手にとって見てもらいました。バオバブの実は実際に食べてみた生徒さんもおられました。

サンダウェにとって自然と隣り合わせの生活は当たり前で、そのため彼らは植物の名前、利用法、動物の性質などを本で読んだわけでもテレビで見たわけでもないのに詳しく知っています。

日本で生活する私たちは、サンダウェのような生活を送ることはできないけれど、毎日通る道で見かける街路樹や花が何の木/花だろう?というように少し自然に興味を持ってみれば、それが自然と付き合う技を磨くきっかけになるのではないでしょうか、と問いかけて終わりました。

10月21日

前回の授業ではサンダウェの生活風景をスライドで見てもらう、という内容でした。今回はそのようなサンダウェの生活も、最近いろいろな変化が起きている、という話をしました。

サンダウェは19世紀中頃までは狩猟と採集を基盤とした生活を送っていたと言われていますが、19世紀末頃には農業や牧畜を行うサンダウェがいた、ということが知られています。サンダウェはその後、農業や牧畜を行いながらも昔ながらの狩猟や採集を続けてきました。サンダウェの狩猟は弓矢と網を使った昔ながらの方法で、銃で動物を乱獲するということは決してしません。しかし、タンザニア政府は動物を保護する目的で、サンダウェが狩猟をすることを禁止しており、しばしば森林保護官がライフルを抱えて村に監視にやって来ます。サンダウェは森林保護官に捕まることが怖くて狩猟ができない、と言います。授業では、サンダウェの手作りの弓矢を実際に手にとって見てもらいました。(授業の終わりの質問タイムでは「矢じりはどうやって作るのですか?」と質問してくれました。)

また、サンダウェはハチミツ採集がとても得意で、「サンダウェのハチミツは本当においしい」と自分たちのハチミツを誇りに思っています。サンダウェ社会には、ハチミツを採集するために樹上に設置する丸太を、結婚する時に新郎が新婦の家族にプレゼントしなければいけないという習慣があります。しかし昨年、NGOによって新しいタイプの養蜂箱(丸太と同じように樹上に設置する四角い箱)が導入されました。これを使うとハチミツがたくさん取れるようになり、取れたハチミツの販売はサンダウェの現金獲得手段になるそうです。しかし、この新しい養蜂箱は値段が高く、また村の人たちでは作ることができません。これが普及したら、結婚する時に丸太を贈る昔からの習慣はなくなるのか、と私は少し心配です。

サンダウェの昔ながらの生活や、それによって得た自然に対する知識を私はとても魅力的だと思いますが、新しく町から入ってくるものは便利で、またお金をたくさん稼ぐことができれば、子供を中学校へ行かせたり、家を立派にすることもできます。

そこで、新しいものと昔からあるもののうち、一方だけを選ぶのではなく、どちらも大切で、どちらも欲しければどうしたらいいのでしょうか?サンダウェにとって何が大切で、彼らは何が欲しいのかということを、私たちの生活を基準に考えるのではなく、彼らの生活を基準に、彼らと同じ視点で考えてみたらヒントが見えるのではないか、という私の考えを述べ、生徒の皆さんもどうしたらいいか考えてください、とお願いして授業を終えました。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。