木を植えて林を焼く−アフリカ・タンザニア農民の試み−

近藤 史

はじめに

今回の授業では、タンザニア・キファニャ村に住む農耕民ベナをとりあげ、彼らが自分たちで木を植えて林を造り、そこで焼畑農業を営むことを紹介しました。環境保全という文脈のなかで、焼畑は、森林破壊の要因のひとつとして取りあげられることも多いのですが、一風変わった焼畑を知ってもらうことで、問題を多面的に捉えてもらうきっかけを提供できれば、と思ってお話しました。

キファニャ村の暮らし

はじめにキファニャ村の気候と地形について簡単にふれた後、授業の導入として、村の暮らしを写真で追いました。水道や電気、ガスの無い環境で、人々がバケツで水をくみに行ったり、石組みのカマドに薪をくべて煮炊きする様子を紹介しました。また、主食のウガリ(穀物の粉を熱湯で練った団子)も紹介して、ウガリを調理するときに使うシャモジに似た道具を、手に取って見てもらいました。

そして、キファニャ村の景観は、もともと草原に覆われた丘陵であり、現在はそこに畑と植林地がモザイク状に散らばっている独特なものであることを紹介した後、本題であるベナの植林焼畑のお話にはいりました。

植林と木の利用

授業の前半では、ベナの植林と木材利用に焦点をあてました。まず、ベナが頻繁に利用する木は、オーストラリア原産のブラック・ワトルや南米原産のマツといった外来の樹種であり、それは彼らの手で植林されていることを紹介しました。写真を交えながら、ブラック・ワトルは薪や炭焼き、家の建材に利用されること、マツは薪に利用されるだけではなく、製材されてタンザニア全土やケニア、マラウイといった周辺諸国、さらに海を越えてアラブ諸国にまで販売されていくことを説明しました。

さらに、興味深い木材利用として、植林した木の幹を前述のように活用した後、伐採跡地では残った枝葉を利用して焼畑が造成されることを紹介しました。「授業の後半では、自然の森ではなく植林地でおこなわれるベナの焼畑を説明しますが、その前に」と前置きをして、アフリカの森林の破壊と保全に関して、よくおこなわれる紹介の例として、参考ビデオ(NHK教育 海外ドキュメンタリー「世界の森は今(1)」1998年より)を上映しました。

植林と組み合わせた焼畑のつくりかた

授業の後半では、植林地でおこなわれるベナの焼畑が、林を守る・次世代の木を育てるという視点の組み込まれた巧みなものであることを紹介しました。まず、焼畑の流れを写真で追いました。伐採→太い幹の利用(薪炭、木材)→火入れ→耕作(3年間)→放棄・林の再生。

そして、農作業のなかにみられる育林技術について、以下の2点を説明しました。1)火入れの前に、延焼を防止するために畑の周縁を土で覆うこと。2)火入れの後で再生してくる多量の木が林の生育に適した間隔で配置されるように、畑の除草をする際に稚樹の間引きや移植をおこなうこと。さらに、こうした技術の背景には、ブラック・ワトルの種は皮が固いので加熱しないと芽がでない、マツボックリは固く閉じていて燃えると開いて種が落ちる、といった樹木の特性に対するベナの深い知識があることを強調しました。

まとめ

最後に、キファニャ村から地球規模の森林利用に視点を移してみました。世界的には、1991-2000年の10年間に日本の国土の約2.5倍の森林が減少しており、そのうち96%がアフリカと南米の熱帯雨林であること、日本は木材自給率が18.5%と世界の森林に依存しているけれども、日本の国土に占める森林の割合は67%もあることを紹介しました。こうした現状をふまえて、みんなで考えたいこととして、世界の森林破壊・森林保全は誰の問題か?森林は誰がどうやって守ればよいのか?といった点をあげて授業を終えました。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。