はじめに
連続講座3回目となる今回の授業では、タンザニア南部高地に住む農耕民ベナの人々をとりあげ、アフリカのなかでも標高が1,700mある高原地域で営まれている彼らの生活と農業の特徴を紹介しました。はじめに、自己紹介をかねて、私がアフリカに興味を抱き農学を学ぼうと思うようになったきっかけである飢餓や砂漠化の問題について話しました。そして、アフリカとひとくちにいっても標高や地形によって自然環境が変化し、水が豊富な地域もあります、一風変わったタンザニア南部高地の話から少しでもそのことを実感して欲しいと伝えました。
タンザニア南部高地の気候と地形
次に、タンザニア南部高地の気候と地形について説明しました。まず、月別降雨量・気温のグラフを大阪と比較することで、南部高地では一年が雨季と乾季にわかれていること、大阪と同程度の量の雨(年間1,000?1,300mm)が雨季の半年間に集中して降ること、標高が高いために冷涼なことを知ってもらいました。そして地形図・空中写真・写真より、現地は河川の源流域にあたり,多数の浅い渓谷が入り組む丘陵地帯であること、谷底には川が流れ、その周囲には湿地が形成されていることを示しました。
農村の暮らしと谷川の恵み
授業の前半では、タンザニア農村の一般的な暮らしを紹介しながら、川と谷底の湿地がベナの人々にもたらす恵みについて話しました。たとえば、生活用水は川や谷の湧水地に掘った井戸からバケツで汲んできます。南部高地では一年中枯れない湧き水が川に流れこむため、他の地域と比べると水くみは簡単で、水は生で飲めるほどきれいです。湿地にたまった粘土からは焼レンガをつくり、家を建てます。また、湿地に生える草で編んだカゴやトックリ、鞄を手に取って見てもらいました。
ベナの農業と谷の畑
授業の後半では、タンザニア南部高地で特徴的にみられる、谷間の湿地につくられた畑について説明しました。多くのタンザニア農村では、雨季のあいだだけ畑を耕し、天水を利用して作物を栽培しています。ところが南部高地では、こうした雨季の畑の他に、一年中湿潤な谷間の湿地で乾季のあいだも畑を耕しています。それぞれの畑の写真をみせながら、畑が作られる場所や農事暦、栽培される作物の違いについて話しました。さらに、谷間の湿地の生態的特徴と、そこを畑として利用するためのベナの農業技術、乾季の間に谷の畑を耕すことの利点を説明しました。
さいごに
アフリカ農業に対して抱くイメージといえば「焼畑と森林破壊」や「過耕作と砂漠化」に偏りがちですが、アフリカの自然環境も日本と同様に地域ごとに異なり、それぞれの土地で環境の特徴を利用したたくみな農業が営まれていて様々な農法があるのです、とまとめて講義を終えました。