第98回アフリカ先生報告(広島市立大学国際学部、2018年11月16日)

特別講義「マサイが語るアフリカ マサイと語るニッポン」

目黒 紀夫

アフリック会員である目黒の調査を10年前から手伝っているマサイ人のジェレミア・パルテイ・ラライト氏が、遠くケニアから日本へと訪れてきました。そこで彼をゲスト・スピーカーとして迎え、目黒の勤務先である広島市立大学国際学部において、アフリカ先生を開催しました。今回のアフリカ先生では、ジェレミア氏にアフリカについて語ってもらうだけでなく、彼が来日以前に想像していた日本と、実際に訪れて経験した日本についても話をしてもらうことで、アフリカを知るのと同時に日本を振り返る機会とすることを意図しました。

講義の様子

プログラムとしては、まず目黒が自分の調査研究の概要とジェレミアとの出会い(それは2008年10月1日にまで遡ります)を説明しました。次に「マサイが語るアフリカ」ということで、ジェレミアの口からマサイ社会の神話上の起源、牧畜を基盤とする社会のあり方、またそれが近年どのように変容を遂げているのかを語ってもらいました。ウシは神からマサイへの贈り物であるとされること、断崖絶壁を乗り越えることでマサイは生活圏を広げてきたと語られること、そして、ミルクを主たる栄養源としてウシとともに移動しながら暮らしてきたけれども、そうした生活は学校教育や土地の私有化、農耕や商業などの広がりとともに変わってきたことが説明されました。さらに「マサイと語るニッポン」ということで、来日前に想像していた通りに日本は発展していること(優れたインフラなど、かつて原爆が落とされて壊滅したとは想像もできないといいます)、また日本人はとても敬意を大事にしており時間に厳格であることなどをジェレミアは話しました。

当日は50人近くの聴衆が集まり、ジェレミアが持参していた布や杖、ビーズの装身具、ビーズの装飾が施されたヒョウタンを手に取ったりしながら、彼の話に熱心に耳を傾けていました。講演後には、ビーズの文化的・社会的な意味や、マサイ人にとって大切な伝統とは何なのかといった、きわめて根本的かつ重要な質問も投げかけられていました。あっという間の90分の特別講義でしたが、ジェレミア氏の歯切れのいい語りもあり、みんなが満足をして帰られていたように思います。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。