第12回アフリカ先生(神戸学院大学)報告

2006年6月27日、神戸市西区にある神戸学院大学の国際関係法ゼミ(二年生、三年生あわせて26名が出席)で、アフリカでの調査や国際協力の仕事に携わった経験をお話しました。

「職業としての海外調査と国際協力」

西 真如

今回の話を聞いてくれる学生さんの中には、大学院への進学や、国際協力の分野で就職を希望する人もいると、ゼミの杉木明子先生から聞いていました。そういった皆さんに役立つ話をということで、私がエチオピアで実施したフィールド調査の経験と、同じくエチオピアの日本国大使館で、草の根無償(日本政府の国際協力プログラムのひとつ)の仕事を担当した経験との、ふたつの話題を用意しました。

1. 海外でのフィールド調査

エチオピアで1930年代からコーヒーの交易をおこなってきた現地商人の活動について、私が修士課程の大学院生だった時期に実施した、フィールド調査の概要をお話ししました。特に長期フィールド調査の手法、つまり現地語を習得し、現地の人たちとできるだけ同じ生活しながら、彼らの文化や考え方を学んでゆく調査手法について紹介しました。

2. 国際協力の仕事

日本政府が途上国で実施している国際協力プログラムのひとつに、草の根無償(正式名称は草の根・人間の安全保障無償資金協力)があります。このプログラムは、エチオピアをふくむ途上国で活動するNGOに、事業資金を提供するというものです。

私は在エチオピア日本国大使館で専門調査員を務めたあと、1999年から三年間、同じ大使館で草の根無償の実務を担当しました。草の根無償の担当者に求められるのは、第一に現地調査によって住民のニーズを把握するとともに、NGOとの信頼関係を築いてゆくことであり、第二には、草の根無償によって支援する事業の必要性を、日本の納税者に納得してもらえるだけの証拠を揃えることです。

しかし現地のニーズは極めて多様であり、上記のふたつの要求を同時に満たすのは、実はたいへんに難しいのだということを、具体的な事例を交えてお話ししました。

3. 話を終えて

神戸学院大学の学生の皆さんは、ふだんから授業の中で、あるいは講演会やワークショップを通じて、フェアトレードの仕組みや国際協力の実践について学んでおられるそうです。そのため私の話に対して頂いた質問も、「フェアトレードの実施が、かえって現地社会の格差を広げてしまう可能性についてどう思うか」とか「(草の根無償の支援で)多数の学校をつくると、こんどは教師が不足するのではないか」といった、たいへん鋭く、かつ実践的なものでした。皆さんの今後の活躍に期待したいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。