カラハリ砂漠のブッシュマン:”自然”とともに生き、そして”自然”に追いやられた人々

丸山淳子

はじめに

今回の授業では、南部アフリカのカラハリ砂漠に住む狩猟採集民ブッシュマンをとりあげ、彼らがいかにに自然とかかわりながら生きてきたのか、そして現在「自然保護」の名のもとでどのような問題に直面しているのか、ということをお話しました。授業の導入としては、はじめに、ダチョウの卵の殻でつくったビーズの首飾りを生徒に手渡して、素材が何できていると思うか、答えてもらいました。そして、その作り方を説明したのちに、「このように自然の資源を巧みに利用しながら生きてきたブッシュマンの話をします」と言って、本題にはいりました。

カラハリ砂漠とブッシュマン

まずカラハリの生態的特徴について、写真や、カラハリと大阪の降雨量・気温のグラフを比較しながら説明しました。またカラハリに住んでいるブッシュマンは、多様な言語グループからなるものの、その多くは比較的近年まで狩猟採集によって生活をしていたことを簡単に説明しました。

狩猟採集活動

授業の前半では、ブッシュマンの狩猟採集活動に焦点をあてました。まず採集活動については、私の調査地の人々を取材した『世界・ふしぎ発見!』の一部を5分程度上映し、「この地域が原産で、重要な水分となる植物は?(答え:スイカ)」という質問に答えてもらいました。さらに写真を見せながら、ブッシュマンの食料の多くは採集活動によって得られることや、植物の分布や生育に関する知識に基づいて採集活動が行われることを説明しました。 狩猟活動については、写真を見せながら簡単に概観した後、一人の狩人が、動物の足跡の発見から、動物を射止めて、解体し、持ち帰るまでを追跡した映像を5分程度上映しました。また弓矢セットを生徒に手渡して、自然の材料で道具がつくられていることを紹介しました。そして自然に対する様々な知識があってこそ、狩猟が可能になることを話しました。 さらに狩猟採集活動を支える移動性の高い居住形態についても触れ、採集する植物の移り変わりに合わせて居住地を移動すること、また広大な地域に少人数が分散して居住していることを指摘しました。

自然保護区からの立ち退きと住民の対処

授業の後半では、長年にわたって自然とともに生きてきたブッシュマンが、現在直面している問題として、自然保護区などに指定された地域からの立ち退き問題を取り上げました。まず「自然保護」や「住民の生活改善」を目的とした政策によって、ブッシュマンが住みなれた土地からの立ち退きを余儀なくされていることを話しました。そして立ち退き先の村の生活について、病院・学校などの写真を見せながら、福祉サービスが以前より充実したこと、その一方で高い人口密度と定住的な生活によって、狩猟採集活動を続けることが困難になっていることを話しました。そして、立ち退きによって生じたこのような変化に対して、現在のブッシュマンがどのように対処しているのかを紹介しました。特に、村に住みながら賃金労働につくブッシュマンと、村の周囲の原野に引っ越して狩猟採集をしながら暮らすブッシュマンがいること、そして村と原野に分かれて住んでいるブッシュマンのあいだにも協力関係があることを、調査によって得られた資料を用いながら説明しました。そして現在のブッシュマンが試行錯誤しながら、昔ながらの狩猟採集生活も、福祉サービスの充実した村での生活もどちらも捨てずに、新しい生活を再編しようとしていることを強調しました。

まとめ

最後にみんなで考えたいこととして、ブッシュマンにとって望ましい生活とはどんなものか、「自然」保護とはなんなのか?「自然」ってなんだろうか?といった点をあげて、授業を終えました。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。