第19回アフリカ先生(アイセック京都大学委員会)報告

2007年2月10日、京都大学文学部教室において、NPO法人アイセック京都大学委員会のメンバーを対象としたアフリカ先生を実施しました。事前にアイセックの担当者の方から、「開発やグローバリゼーションが、アフリカの地域社会に与えている影響について知りたい」という趣旨の要望があったので、今回の話題は「コーヒーをとおして見たグローバルとローカルの関係」(黒崎)と、「アフリカの農村社会と参加型開発プログラム」(西)に設定されました。

アイセックは、アフリカの発展に寄与する人材の育成を目的にした、アフリック・プログラムを推進しています。今回のアフリカ先生は、このアフリック・プログラムの活動の一環として実施され、アイセックのメンバーを中心に30名近い参加者がありました。

「コーヒーをとおして見たグローバルとローカルの関係」

黒崎 龍悟

タンザニア南部の農村におけるコーヒー生産の現状を報告することで、グローバルとローカルの関係について紹介することを試みました。

タンザニア南部地域の経済をながらく支えてきたコーヒー生産が、1990年代に世銀やIMFによって導入された構造調整政策によってどのように変化したかを示し、そしてそのことが地域経済だけでなく、生業システムの変容をとおして自然環境へも影響を与えたことを説明しました。

さらにこの現状をふまえつつ、近年になって新しい耐病性のコーヒー品種の導入や生産過程を改善することで品質の良いコーヒーをつくろうと試みる農民グループが現れてきたことを紹介し、グローバルな流れに大きくゆさぶられながらも、活用できる資源を用いて主体的に現状に取り組む住民の様子を説明しました。

「アフリカの農村社会と参加型開発プログラム」

西 真如

エチオピアの農村で、教育や民主化支援などの活動をおこなっているNGOの活動を紹介しながら、「参加型」の開発手法について解説しました。

参加型の開発手法とは、開発プログラムを実施するための意思決定の過程に、住民を参加させる手法です。エチオピアをはじめアフリカ諸国で活動する開発NGOは近年、この参加型手法を積極的に取り入れており、日本政府も「草の根・人間の安全保障無償資金協力」というODAプログラムを通じて、これらのNGO活動を積極的に支援しています。

開発NGOの中には、参加型開発の手法を使って、住民のニーズを反映した効果的なプロジェクトを実現しているものもあります。例えばエチオピアで初等教育の普及に取り組んでいるRATSONは、大規模な小学校を建設する代わりに、教室が二つしかない小さな小学校を、たくさん建設するという手法を取っています。

小さな学校を数多く建設することは、一見すると効率が悪そうですが、RATSONの狙いは他にあります。小学校までの通学距離が長くなりがちな農村では、小さな女児を学校に通わせることに不安を感じる親が少なくありません。RATSONは、小学校の数を増やすことで、通学距離を減らせば、女児の就学率を向上させられると考えたのです。

しかし他方で、従来の参加型手法には、構造的な問題があることも指摘されています。開発NGOは、住民との対話にもとづいて、プロジェクトを計画しますが、実際には、開発資金を提供する援助国や国際機関の意向によって、プロジェクトの内容が変更されてしまうことも少なくないのです。極端な場合、援助国への対応に追われて、住民と話し合う時間が取れないという悩みを抱えているNGOさえあります。

住民の要求にもとづいた開発プログラムをつくるという取り組みは、参加型手法の登場で大きく前進したように見えて、実はいまだに解決されていない問題なのだと言えそうです。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。