第91回アフリカ先生「United States International University 国際関係学部」報告(2017年9月14日)

「わたしのフィールドワーク」

善積 実希

わたしは2014年からケニアのサンブル県(Samburu County)という場所でフィールドワークをしています。今年もフィールドワークのためにケニアに約3ヶ月のあいだ滞在していました。そのなかで、わたしが所属する大学院のカウンターパートであり、ケニアの首都ナイロビにキャンパスがあるUnited States International University(USIU: 米国国際大学)で「アフリカ先生」を実施しました。国際関係学部の先生のご厚意で、「調査手法」という講義のなかでわたしのフィールドワーク経験、とくにフィールドワークでどのような調査手法をもちいているのかについてお話しさせていただきました。

わたしはサンブル県のある都市に所在する障害者支援施設で調査をしています。調査の目的は、この施設で生活する障害をもつ子どもたちの社会関係や彼らが受けている支援について調べることで、参与観察とインタビューという手法を用いています。参与観察では「参与」という言葉から想像できるように、まさに研究者(わたし)がその場に「参与」し、その場で巻き起こる情景を「観察」して記録します。わたしはこの施設のボランティアとして子どもたちと生活しながら調査も実施してきました。

フィールドワークを開始した当初は、子どもたちやスタッフの皆さんと同じ空間にいるものの、なんだか距離を感じるような日々が続きました。そこで、わたしはまずボランティアとして子どもたちと時間を過ごし、スタッフと共にそうじや洗濯、給食の準備などを一緒にしました。すると、時間が経つにつれ、その「距離」はどんどんせまくなっていきました。なんとなく感じていた、その場にいる人たちとの「距離」を感じなくなったとき、わたしは研究者としてインタビューや観察などを開始しました。

ボランティアとして活動していけばいくほど、彼らとの信頼関係が構築されていく。そのいっぽうで、わたしは自身の立場がわからなくなっていきました。「ボランティア」であるわたしか、「研究者」としてのわたしか。あるとき、わたしが子どもたちの食事介助をしている最中に、別の場所でインタビューをする機会がやってきたのです。しかし、目の前にいる子どもの食事を中断させてまでその場を離れることができず、「研究者」としてではなく「ボランティア」としての立場を優先することを選びました。同じようなことはなんどもありました。

こうした、参与観察という手法を用いてフィールドワークを実施するにあたっての葛藤(「ボランティア」と「研究者」という2つの立場を両立させること)についてお話しさせていただきました。学生のみなさんからはたくさんのフィードバックをいただき、ある学生さんからは「研究の成果をどのように社会に還元させるか」という問いかけがありました。これは、わたしが調査を開始したときからの課題です。また、当日はUSIUの博士課程で研究をされている2人の学生さんも発表されました。異なる研究アプローチを実践する学生さんのお話をきくことができ、そして様々な視点からフィードバックをいただき、「わたしのフィールドワーク」を見つめなおす機会をいただきました。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。