『僕らはソマリアギャングと夢を語る』永井陽右=著

紹介:佐藤 秀

「世界最悪の紛争地」と呼ばれるソマリアで、テロや紛争問題の解決に向けて取り組むアクセプト・インターナショナルというNPO法人がある。

テロリストの脱過激化や社会復帰を支援するその独自のアプローチと、同団体の代表である本書の著者の熱い想いに惹かれ、私自身も定額寄付者として同団体を支援している。

本書は、そんなNPO法人の代表である著者が大学1年生の頃にソマリアの紛争問題に興味を持ち、前身団体である「日本ソマリア青年機構」を起ち上げ、悩みながらも活動を推進していく経緯を描いたエッセイである。

著者がソマリアのテロリストに関わる活動を始めたのは、比類なき人類の悲劇と言われるソマリア紛争という問題を「知ってしまった」からであるという。

著者は、ソマリア紛争問題に対して「何かしたい」と思い立つも、専門性もない大学生が立ち向かえるような問題ではないことは誰の目にも明らかで、「大学生が行く場所ではない」「大学生には無理だ」等と言われ続
ける。それでも「力がないから」という理由では諦めたくない著者は、自らが通う大学にソマリアから紛争孤児が留学してくるという情報を掴む。

そこから現地組織とのつながりを築き、日本人メンバーも集め、徐々に団体として活動を練り上げ、ついには、今紛争を起こしている武装勢力の大人たちではなく、そこに向かいつつあるギャンググループの若者たちをターゲットにした社会復帰プログラムを立ち上げ、紛争問題の解決に取り組んでいくのであった。

僕自身も「紛争問題を何とかしたい」という思いを持っていたことがかつてあったが、自分にはあまりにも大きな問題だと、いつしか諦めていた。同い年でありながら独自のアプローチで紛争問題の解決に取り組む著者の志を見ていると、諦めなければ大概のことは出来るもんだな、と思う。

本書は、著者が今も取り組む紛争問題解決に興味を抱いたきっかけやその活動の誕生期について知ることが出来るため、紛争問題に対して何か出来ることがないかと感じている人がいれば一度は手にとってみることをおすすめする。

◆書誌情報:
出版社 ‏: ‎英治出版
発売日 ‏: ‎2016/5/10
単行本(ソフトカバー) ‏: ‎208ページ
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4862762221