今年1月、国家試験に合格した見習い生の卒業パーティーを行いました。試験を受けたのが昨年の4月、合格発表があったのが5月、それなのに、なぜこんなに時間がかかったかというと、国からの合格証書がなかなか送られず、12月にやっと手にすることができたからです。
卒業パーティーは、保護者や地域の人々を呼んでお披露目をすると共に、感謝を表する場です。見習い生たちには、仕立て屋と髪結いの主人から祝福が送られます。特にこの祝福は、ベナンでは文化的に重要な意味を持ち、祝福なしでアトリエを開いてもお客さんが来ずうまくいかないため、見習い生はかならず祝福してもらう必要があるのだと言われています。
ただし、このプロジェクトは、NGOの長屋建物の賃貸収入で成り立っていて、その収支はいつもぎりぎりです。パーティーを行うにはテントや椅子、音響などをレンタルし、来場客に食事をふるまう必要がありますが、見習い生の卒業後にこのパーティーを行うのは予算的に難しいものがありました。そのため、祝福の儀式だけにできないかと支援メンバーは現地スタッフと話していました。
しかし、現地スタッフと保護者は、たとえNGO予算がなくとも、パーティーはどうしても行わなければと、お金を出し合い、知り合いをつたって機材やDJを安く調達し、1月に参加数20~30名のパーティーを行いました。日本の活動メンバーとしては、パーティーよりも今後、卒業生が自身のアトリエを開設する準備などにお金を使った方がよいと思ってしまうのですが、ベナンの人々にとっては多少生活が苦しくなってもパーティーを行うことが大事なことのようです。卒業パーティーの写真からは、出席者の嬉しそうな様子が伝わってきました。
ただ残念なことに、国家試験に受かった四人のうちパーティーに参加したのは二人だけです。一人は合格証書を手にしてから連絡が取れなくなり、もう一人は母親が参加を許可してくれなかったからです。連絡が取れなくなった子は、一緒に暮らしていた祖母も正確な居場所がわからない状態で、どうも今男性と一緒に住んでいるようです。また、参加許可が得られなかった見習い生の母親には、現地スタッフがお金が無くともせめて祝福だけは受けに来てほしい、着る服が無くて来れないというのなら自分が出すと説得したそうですが、もう少し後が良いと結局今回は参加を見送ったようです。正確な理由はわかりませんでした。
こうしたことは、両親が見習い費用を負担する通常の見習い生にも起こることではあり、人を育てるという事業である以上、仕方ないところもあると思います。ただし、プロジェクトとして特に立場の弱い人を対象に見習いを実施している以上、できるだけ避けたいこともでもあります。今後の防止策としては、これからの見習い生を受け入れる際に、保護者が最後まで協力することの了承をとりつけることや、信頼関係を裏切らないことの重要性などを伝えて教えていくこと、卒業後にどうするかを本人、保護者とよく相談しておいて意識してもらうことなどを、日本の活動メンバーと現地スタッフで話し合っています。人の関わる事業なので、なかなか絵に描いたようには上手くいきませんが、経験を積み重ねながら、学んでいければと思っています。