『ザンビアを知るための55章』島田 周平・大山 修一 編著

紹介:村尾 るみこ

南部アフリカの内陸国であるザンビアは、平和な国である。1964年、東京オリンピックが開催されている期間に独立を果たして以降、組織的で大規模な武力行使がなされたことはなく、ザンビアの人自身も口々に平和であることを特徴として語る。本書のはじめにでも、2人の編者は他地域と比較しながらザンビアの平和について言及している。

本書は55章26のコラムが以下の6部に分かれて掲載されている。各章・コラムは多数なため省略するが、出版社のサイトに詳しく掲載されているので参照されたい。

Ⅰ 自然と国土
Ⅱ 歴史――内戦・紛争のないザンビア
Ⅲ 民族と言語
Ⅳ 産業と開発
Ⅴ 宗教と教育、文化、スポーツ
Ⅵ 社会の問題と克服

 私自身は西部州で調査をはじめ、まだ訪れたことがない地域も多くある。ずっと知らないままでいることも多いだろう。それでも本書を読みながら、ザンビアの色々な人たちの顔がうかんでくる。SNSのビデオ通話をかけてくれ、独立記念日をともに祝ったり、近況を話したりしてくれる。どの人も、本当に人懐っこく、温かい。対面で会える日はもう少し先かもしれなくても、子供たちがどんどん大きくなっていても、感染者数が増え困難なことがわかっていても、みんな変わらずに「いつくるんだ!?」と聞いてくる。本書の共著者の文章からも、どこかそのようにして、それぞれが出会った人たちとつながっている「生きた情報」が伝わってくる。確かな学術的情報を支えているのは、さまざまな来訪者を受け入れてくれている、ザンビアに生きる人びとであると再確認する。
ザンビアは経済的にみれば小国であり、社会問題もあれば政治問題もある。それでも、たくさんの魅力がある。平和であることだけでは語りつくせない。そのように、本書は語っているようだ。

書誌情報

  • 出版社: 明石書店
  • 定価:本体2,000円+税
  • 発行:2021年8月

出版社のサイト https://www.akashi.co.jp/book/b528711.html