『アフリカ人間読本』 米山俊直=編

紹介:黒崎 龍悟

2010年になり、ミレニアム開発目標の達成期限が残り5年となった。そのせいか、最近では新聞や雑誌の記事にアフリカの文字をみつけても、援助に関連した情報ばかりになっている気がする。焦眉の課題について発信するのはもちろん重要だが、その一方で、落ち着いてアフリカのことを知りたいと思った場合、私たちはどこから情報を得たらよいのか、とも考えてしまう。書店に行って、開発援助や経済のことだけでなく、アフリカ全般のことを広く学ぶための入門書を探しても、意外と少ないことに気づく。

「アフリカ人間読本」は、いろいろな地域・トピックを網羅しているし、執筆者はいずれも筋金入りのアフリカニストで、文化や生活、社会問題などを読みやすく書いている。アフリカ全般を理解する入門書として、とても良い本である。20年以上前に出版ということで、あつかったトピックの一部などもだいぶ変わってきているかもしれない。しかし、アフリカをそこに住む人の視点から語る内容は、今でも十分に訴えかけるものがある。むしろ、年月で色あせないその点をこそ、本書をすすめする最大の理由としたい。

アフリカについて学ぶというだけではなく、読み物としても十分面白い。手元において気分転換に、という読み方でもいろいろなアフリカについて知ることができる。

目次

1 アフリカ世界への入口
2 アフリカ職業案内
3 誕生から死まで
4 生活の場面
5 集団とのかかわり
6 政治とその問題
7 現代経済事情
8 大自然の中の生命
9 精神世界
10 コミュニケーション
11 食文化探訪

書誌情報

出版社:河出書房新社
発行:1987年
単行本: 257ページ