『ネルソン・マンデラ—アパルトヘイトを終焉させた英雄(ちくま評伝シリーズ<ポルトレ>)』 筑摩書房編集部=著

紹介:西崎 伸子

政治家・黒人解放運動家としての故ネルソン・マンデラ氏について書かれた本はたくさん出版されています。本著もそのうちの一冊です。比較的平易な文章で、小学校高学年ぐらいから読むことができます。南アフリカやアパルトヘイトに関心がなくても、今、何かに苦しみ、悩み、闘っている人(あるいは闘いたいと思っている人)に読んでほしい本です。マンデラ氏が46歳から27年間もの間、閉じ込められていた刑務所・ロベン島での生活「第4章:獄中で学んだこと」は必読です。岩井さんからのおすすめ映画「マンデラの名もなき看守」とあわせてご覧ください。

以下は、わたしが心打たれた文章の一部です。心にぐいぐいとくるフレーズが、本書にはたくさんちりばめられています。

・「人類に対する罪」とまでいわれたアパルトヘイト。先進国の多くはあるときまで、これを半ば容認して南アフリカとつきあってきました。日本もその例外ではなく、1980年代後半には、南アフリカ最大の貿易相手国でさえありました。このことは、本書を読むときにぜひ、覚えておいてほしいことです。(10ページ)

・この社会は誰の、どんな意図で作られているのか。その構造が見えてくると、今まで自分が漠然と断片的に考えてきたことや、人々の言葉や思い、行いがそこに位置づけられて、まるで厚いカーテンをさっと引いた時のように、何もかもがくっきりとみえてくるように感じます。「視点を獲得する」ということは、人を変えるのです。マンデラにとっての「はじめの一歩」は、自分の置かれた現状と歴史をはっきりと黒人の視点で整理することでした。(33ページ)

・恐怖と頑迷と不寛容—アパルトヘイトを支えた心理を的確にあらわしていると思います。(36ページ)

・後にマンデラは、獄中で得たものは何かと聞かれて「大人になったことだね」と即答しました。ロベン島に来たとき、彼はすでに四六歳だったのですが。(95ページ)

書誌情報

出版社:筑摩書房
発行:2014年9月
定価:1,200円+税
単行本(日本語):185頁
ISBN-10:4480766243
ISBN-13:978-4480766243