ワイヤーフェンスが7村へ拡大(2015年9月)

岩井雪乃

ワイヤーフェンスの効果を確認

「ゾウはワイヤーを恐れる」と、畑の周りにワイヤーを張って収穫に成功した村人がいました。そこで試験的に、我々のプロジェクトでも設置したところ、確かに効果があって、ワイヤーを張った畑にゾウは入りませんでした!観察していた畑の持ち主によると「鼻でワイヤーに触ると、きびすを返して保護区のほうに帰っていった」とのことでした!

写真1 ワイヤーフェンス。目立つように布やペットボトルをぶら下げ

 

写真2 養蜂箱と組みあせて設置する畑もある

写真3 フェンスのすぐ外にはゾウ糞が!

我々のワイヤーフェスは、本当にただのワイヤーです。日本の獣害対策でよく使われている電気柵ではありません。「こんな頼りないワイヤーを、ゾウが恐れるの?」と、私とパートナーNGOのセデレックは半信半疑でしたが、絶大な効果を発揮したのです。

コストが安いので一気に拡大

そこで2015年7月からは、村と動物保護区の境界に、直線状にワイヤーを張りめぐらすプロジェクトを開始しました。ワイヤーは養蜂箱と比べると、劇的なコスト削減です!養蜂箱では、一つの畑を囲うのに少なくとも養蜂箱50個が必要で、その材料費と設置の諸費用で20万円以上かかります。それがワイヤーの場合は、20万円あれば40巻のワイヤーを買うことができ、それは16kmになります。それを、一つひとつの畑を囲うのではなく、境界線に設置してまとめて村の畑を守ります。この方法では、200世帯の畑を守ることができるのです! 20万円での裨益者は1500人にもなります。

図1 ワイヤーを設置する場所の地図

養蜂箱は3つの村でしか実施していませんでしたが、ワイヤーフェンスでは一気に7村に活動地を拡大し、1500世帯の畑を守る計画です!(図1参照。このプロジェクトは、W=BRIDGEの助成金をいただいて実施しています)

設置前の事前説明会

8月にタンザニアに行ったときは、新しくワイヤーを設置する村で事前説明会を開催してきました。1週間ほどの滞在で7つの村を訪問したので、毎日移動のハードスケジュールでした。行く先々で「日本からわざわざお客が来た!肉を食え!」と歓迎してもらい、連日、ヤギをつぶしてもらって食べました。

写真5 住民説明会。木の下が集会所

写真6 岩井からもあいさつ

写真7 集会の後はみんなで食事

写真8 ヤギ肉スープと主食のウガリ(穀物の粉をねっただんご)

農民は農民から学ぶ

説明会でワイヤーフェンスについて説明するのは、私たちではありません。村の代表3名に、事前にすでに設置されたワイヤーを視察に行ってもらい、そこで見てきたことを報告してもらいます。「こんな細いワイヤーでゾウを追い払えるのか、私も信じられなかったが、ミセケ村の人はゾウが入らなかったと言っていた!」「保護区に接した畑なのに、ちゃんと収穫されていたのを俺は見た!」「ワイヤーが切られてしまうこともあるから、きちんと見回って修理する必要がある」などと、話してくれます。

写真9 ワイヤーを視察する近隣村の農民

写真10 村の人たちに報告する女性

自分たちの仲間からの報告を聞いた村人たちは、「それならぜひやってみよう!」と主体的になります。以前、県の役人と外国NGOの専門家が電気柵の導入について話をしにきたとき、村人は不信がって電気策を拒否したことがありました。しかし、同じ村人が勧めるワイヤーフェンスは、積極的に挑戦する気になってくれます。

これからワイヤーを配布して、村人たちが自分で設置していきます。どうか効果がありますように!次の収穫期には、たくさん収穫してもらいたいです!

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。