第49回アフリカ先生報告(京都外国語大学のユネスコ週間)

藤本 麻里子・松浦 直毅

京都外国語大学では、2010年7月5~9日を「ユネスコ週間」として、前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏の講演をはじめ、アフリカに焦点を当てたさまざまな企画が催されました。アフリック・アフリカからは7月6日に松浦直毅が、7月8日に藤本麻里子がそれぞれ講演をしました。

講演1 「アフリカ熱帯林の先住民・野生動物・自然保護」

松浦直毅

私の講演ではまず、ピグミーと呼ばれるアフリカ熱帯林で暮らす狩猟採集民の生活や文化について写真や映像をまじえて紹介しました。また、異文化理解のための心がまえやフィールドワークの経験などについても話しました。次に、私の調査地であるガボンを中心に野生動物の分布や特徴などを述べ、自然保護の状況について説明しました。さらに、保護活動と住民生活のあいだにはコンフリクトがあり、とくに前半で述べたピグミーのように自然に強く結びついた人々の権利が十分に守られていないという問題点を指摘しました。  外大の学生を中心とした参加者のみなさんは、たいへん熱心に話を聞いてくださり、映像や写真にもおおいに興味を持っていました。質疑応答の時間には鋭い質問がたくさんあり、終わってから個人的に話を聞きに来てくれる方たちもいました。こちらとしても話し甲斐があり勉強にもなりました。

講演2 「タンザニアにおける野生動物保護と民族文化」

藤本 麻里子

7月8日の講演では、タンザニアにおける野生動物保護政策と、その影で衰退する民族文化の実態について紹介しました。野生チンパンジーの調査地を例に出し、ヒトと動物の居住地を分けることの意義と、その弊害についてお話しました。タンザニアのトングウェと呼ばれる人々の民族語や伝統文化の継承が困難になりつつある現状を紹介ました。山間部に残る、伝統的な生活様式を維持している集落では、伝統儀礼や民族語がしっかり根付き、次世代にも着実に受け継がれています。しかし、野生動物保護や国立公園の策定に伴い、伝統的な集落を離れざるを得なかった人々の間では、民族文化の継承が困難になっています。生物多様性のみならず、言語多様性の重要性について指摘し、民族文化が野生動物同様に保護の対象となるべき財産であることを述べました。伝統儀礼の様子や民謡などを、映像や音声を用いて紹介しました。質疑応答の時間にとどまらず、講演終了後にも多くの学生さん、教員の方々に質問をいただき、有意義な講演会となりました。

7月9日におこなわれた前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏の講演にも参加してきました。政治的な混乱で訪問がかなわなかったソマリア以外のアフリカのすべての国を在任中に訪問されたという松浦氏の講演は、含蓄があってたいへん興味深いものでした。とくに印象に残ったのは、事務局長の2期目に立候補するときにアフリカの国々から推薦を受けたというお話でした。1期目での活動がアフリカの国々から高く評価されていたため、日本政府よりもむしろアフリカの国々の方が積極的にキャンペーンを展開してくれたそうです。質疑応答では次々に手があがりたくさんの質問が寄せられ、また、さまざまな民族衣装に身をつつんだ実行委員の学生たちが各国の言葉でスピーチをしたり歌を歌ったりと、会場は熱気につつまれていました。
私たちの講演でアフリック・アフリカの紹介もさせていただいたので、今後、こうした熱意をもってアフリカに関心を持ち、アフリック・アフリカの活動にも参加して下さる方々があらわれてくれればと期待しています。

ユネスコ週間のフライヤー

 

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。