「エチオピアの野生動物保護と開発(1)(2)」(2008年10月18日・25日)
連続講義というのは、わたしの経験からすると、単なる「寄せ集め」になることが多く、意識的なコーディネートがおこなわれない場合は、いろいろな講師がいろいろな話をしたというバラバラとした印象しか残りかねないことがあります。多種多様に話される講義の関係性を聴講性の判断に委ねること自体は決して悪いことばかりではないのですが、統一したテーマが用意されているのに、という残念な結果に終わることもないわけではありません。
アフリック・アフリカのメンバーが講師の一部をつとめる法政大学の連続講座「アフリカの環境保全と開発—人類学・地域研究の視点から」では、講師陣の講義内容や、アフリカへのかかわり方には差異がありますが、講師同士の共通理解がある点で、非常にやりやすい講義でした。「やりやすい」というのは講義が円滑に進む、という意味だけではなく、毎回、同じようなフレーズが異なる講師から五月雨式に発せられるであろうと推察でき、こちらが強く意識しなくても連続性が担保されるしくみになっているからです。
さて、わたしは、アフリカの野生動物保護に関連する講義を2回担当しましたが、聴講者にとっては、4、5回目となり、批判的視点をもちあわせて授業を聞いてもらえたのではないかと思います。
1回目は、野生動物を守るとはどういうことか、という問いかけを、日本のイルカショー、クジラ漁、獣害の写真を見せながら学生に問いかけ、広義の「野生動物保護」を考えるためには、人間社会のあり方を考える必要があることを説明しました。その次に、青年海外協力隊としてエチオピアの野生動物保護区で環境教育活動をおこなった経験を話し、アフリカの野生動物保護活動において環境教育がどのような意味をもちうるのかを説明しました。
二回目は、住民参加型の野生動物保護の主流と考えられている「経済的利益の創出と還元」について、南アフリカでおこなわれているスポーツ・ハンティングやサファリを紹介する映像資料やジンバブエの住民参加型の野生動物保護プログラム「キャンプファイア」を例示しながら説明しました。さらに、この方法が適用できない地域では「在来知を用いた野生動物保護」を考える必要があり、その例としてエチオピアの国立公園の密猟対策の試みを紹介しました。
回収されたコメントから、大枠でアフリカの野生動物保護の現状が理解されていることがわかりました。しかし一方で、管理間引きやスポーツ・ハンティングという行為に対する嫌悪や拒否反応が強くみられました。それがたとえ、まわりまわって地域住民の利益になるということであっても、です。市場原理にどっぷりとつかった「持続的利用」、日本の教育現場で重視される「生命の尊さ」や狭義の「野生動物保護」、そして「伝統社会」で今もおこなわれている狩猟、これらの関係性はそう簡単に理解できないでしょうし、納得もできないでしょう。多くの疑問を抱えて、自ら考えていただきたいと思います。
アフリカの人間と野生動物の関係を考えるということは、間接的にわたしたち日本人のライフスタイルを再考することにつながるはずです。アフリカの野生動物保護の現状から、わたしたちは何を学べるのか、このことを少しでも考えるきっかけにこの講義がなればと願っています。
アフリック・アフリカのメンバーが担当する連続講義はまだ続きます。是非足を運んでみてください。