第31回アフリカ先生報告「京都外国語大学」

「アフリカについて考えよう! African SIP -ザンビア・ザンベジ川氾濫原に生きる人々-」(2008年12月19日)

岡本 雅博

2007年に京都外国語大学60周年記念ピースプロジェクト「Imagine Peace−アクションプラン模擬国連」が開催され、京都外国語大学の多くの学生が南北問題や世界各地の貧困問題に関心を寄せるようになった。そうしたなか、同大学の模擬国連でアフリカ班を担当した学生が中心となり、2008年9月に「京都外国語大学イマジンピース・アフリカンイベント 〈Change your mind:アフリカについて考えよう!〉」が開催されたが、今回の企画はその流れをつぐものである。

最初に、企画に携わった伊藤はづきさん(京都外国語大学)から、アフリカにおけるマラリアの現状についての報告があった。模擬国連でアフリカのことを学んだ彼女らは、アフリカでは、マラリアで命を落とす人口が少なくなく、特に乳幼児の犠牲者が多いことを知り、実際アフリカでのマラリア対策に協力するために、募金活動にも取り組んできた。集まった募金はスーダンやアンゴラでマラリア予防活動をすすめているNGO「難民を助ける会」に寄付したとのことである。

当日は30名以上の学生が集まった
アフリカのマラリアについて説明する伊藤はづきさん

続いて、岡本雅博(アフリック・アフリカ)が「ザンビア・ザンベジ川氾濫原に生きる人々」と題して、ザンベジ川上流域の氾濫原に居住するロジの人々の暮らしと生業について講演した。講演内容の要旨は以下のとおり。

(1)氾濫原のような湿地的環境はマラリアを媒介するハマダラ蚊の生息域でもあり、マラリアの危険性もきわめて高い(実際に現地滞在のあいだ、岡本本人もマラリアに罹った経験が何度かある)。
(2)氾濫原はそのような負の面があるいっぽう、1年に複数回の作付けが可能(農業)、人口よりも多い数のウシを飼養することができる(牧畜)、さらには毎年の洪水がもたらす漁獲の恵み(漁撈)など、多様な生業を複合的に営むことができる「豊か」な環境でもある。
(3)しかし「豊か」さを享受するためには、氾濫原で生きるための生活技術(例えば、丸木舟を漕ぐ技術、牛を泳がせる技術など)を身につけなければならない。そしてこのような技術を習得することがロジの民族的なアイデンティティにもつながっている。
(4)ロジは、このような氾濫原を基盤として、アフリカ大陸でも有数の王国を形成した。現在でも王国組織は持続しており、洪水期におこなわれる王の移動の祭儀(クォンボカ)はこの地域でもっとも賑やかな行事となっている。

さらに、ロジの人々が氾濫原で毎年起こる洪水といかにつきあっているかを具体的に理解してもらうために、映像作品『ブロジ』(撮影編集・岡本雅博、2008年)を併せて上映した。質疑応答では、「ロジは氾濫原での暮らしを本当はどう思っているか」、「アフリカの王とはいかなるものなのか」、「氾濫原の水を飲んでも衛生的に問題はないのか」あるいは「氾濫原ではトイレはどうなっているのか」など、さまざまな質問が投げかけられた。

ザンベジ川の氾濫原の暮らしについて語る岡本雅博
参加者とのあいだで活発な質疑応答がなされた