第53回アフリカ先生報告 大阪ピースネット「美味しいコーヒーの飲み方:コーヒー村はどうなっているの?」(2010年10月15日)

溝内 克之

「大阪ピースネット(PNO)」の方々にお招きいただき、「美味しいコーヒーの飲み方:コーヒー村はどうなっているの?」と題してアフリカ先生を実施してきました。大阪ピースネットは、さまざまな分野で活躍される社会人の方々で組織されている団体で、大阪のオフィス街北浜で月1回勉強会を開いているそうです。
今回のテーマは、コーヒー。

コーヒーの実

日本の日常にすっかり溶け込んでいるコーヒーですが、あまりその生産者たちのことは知られていません。最近では生産者と消費者とを直接結びつけ、生産者の生活改善そして国際貿易の不公正さの是正を目指したフェアトレード(FT)への関心が高まっており注目されるようになり、コーヒー生産者たちへの関心も高まっていますが、FTの文脈では「不公正な取引を押し付けられる」農民像が強調されるあまり、それだけでは捉えきれない人々の生活はあまり伝わってきません。そこで今回は、私がここ数年お世話になっているキリマンジャロ山東部のコーヒー生産村のお話をしました。

まず、タンザニアの概観、コーヒー生産の歴史、タンザニア産業におけるコーヒーの役割、コーヒーの栽培から出荷までの様子、お葬式や協同作業といった村の文化的・社会的側面などをお話ししました。それに続き、1990年代以降の「コーヒー危機」(コーヒー販売価格の低下など)と呼ばれるコーヒー生産の環境変化や、各世帯が保有する土地の狭隘化などの地域が抱える課題についてお話ししました。また、地域の状況を詳しく見ていくと、村の人々はコーヒー生産の開始と並行して、教育への投資や都市部への積極的な進出、村内での商業活動などの多様な所得源の確保などを試みており、コーヒー生産だけに依存してきたわけではないこと、また都市でエリートや商業成功者となった人々に支えられていることなどをお話ししました。キリマンジャロの村の人々の日常生活は、「国際貿易の中で、不公正な取引を押し付けられる農民」という一面的なイメージだけでは捉えきれないことをお話ししました。

コーヒー生産から野菜の栽培へと切り替えた世帯もいます
村には都市の成功者が建てた瀟洒な家屋が立ち並んでいます
PNOメンバーのみなさんは、それぞれの分野での専門家(翻訳、法律、行政など)であったことから、和やかな雰囲気でしたが、それぞれのご経験から鋭いご質問、ご意見をいただきました。またメンバーの皆さんが関わっている日本社会の抱える課題について教えていただくよい機会にもなりました。今後もこのような多様な分野の方々との交流を深めていくことでアフリック・アフリカの活動にも良い影響があるのではないかと感じました。