10月26日に、「京都文教大学サテライトキャンパス宇治橋通り」(京都府宇治市)で、アフリカを題材としたドキュメンタリー映像上映会が開催され(共催アフリック・アフリカ)、新井一寛、岡本雅博(アフリック会員)、大石高典(アフリック会員)が撮影・編集した映像作品が上映された。当日は、約15名の観客が集まるなか、京都文教大学サテライトキャンパスのスタッフである愚川聡晃の進行により、以下のようなプログラムで上映および新井・岡本・大石と参加者らによるディスカッションがすすめられた。
(1)新井一寛『Young Shaykh and Followers in the Jazuliya SufiOrder』(8分、エジプト)
(2)岡本雅博『ブロジ』(Bulozi)(9分、ザンビア共和国)
(3)大石高典『採る、捕る、獲る、ドンゴを撮る!』(”Bisso na Bisso(Among us)”: Gathering, Catching, Hunting, Filming and Beyond.)(25分、カメルーン共和国)
(4)自由討論
新井作品は、イスラームの一派であるスーフィー教団の宗教儀礼を扱った映像である。新井からは、自分が撮影していくプロセスのなかで、教団の側の人びとが撮影者を意識するようになり、教団そのものや儀礼のありかたにも変化が生じたという説明がなされた。参加者からは、日本では馴染みの薄いイスラームの実際に関する質問が投げかけられた。続く岡本の『ブロジ』は、ザンベジ川流域の氾濫原に暮らすロジの生活と儀礼を撮影した作品である。会場からは、洪水を欧米や日本のように制御するのではなく所与のものとして受け止めるロジの生きざまに感銘を受けたという感想があげられた。岡本は、日本では洪水というと災害としてのイメージが強いが、世界にはさまざまな洪水と人のかかわり方があると語った。最後の大石作品は、カメルーンの熱帯雨林に住む漁撈農耕民バクエレと狩猟採集民バカ・ピグミーの生業活動に迫った作品であった。野生動物を自ら狩猟し、屠り、あるいは魚を捕獲する人びとの姿に、参加者の多くは圧倒された。現在の日本では食料を自分たちで獲得することがなくなっているだけに、熱帯雨林の人びとの営みは衝撃的であったようだ。
今回の3作品は、北アフリカのエジプト、中央アフリカのカメルーン、南部アフリカのザンビアと撮影した国も異なるとともに、ぞれぞれの地域の環境も都市、熱帯雨林、氾濫原とバラェティに富んでいたため、アフリカの多様なイメージをつかむためには効果的なプログラムであったと思われる。またアフリカの人びとの映像をとおして、アフリカへの理解や関心を深めるだけでなく、自分たちが暮らす日本の生活について省みる機会となったことは望外のよろこびであった。自由討論の後は、同じ会場で懇親会もおこなわれ、和気あいあいとした雰囲気のなかで熱い議論が引き続き交わされた。
アフリックの映像上映に関する企画としては、2007年12月の「ルワンダ映画上映会&トーク」に続く今回のイベントであった。近年、アフリカをフィールドとする人類学者・地域研究者の多くが、写真機だけでなく、ビデオカメラを用いてフィールドワークをおこなうケースが増えている。そしてまた、撮影した映像を調査分析の方法として使用するだけでなく、ドキュメンタリーフィルム・民族誌映画として編集する場合も多くなってきている。今後とも日本におけるアフリカ理解の促進にむけて、映像を活用した取り組みを、アフリックとしてもすすめていけたらと思う。