フィールドネット・ラウンジ企画: 「研究者はいかに野生動物保護にかかわるべきか」(2015年1月10日)

目黒 紀夫

2015年1月10日に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で開かれたワークショップ「研究者はいかに野生動物保護にかかわるべきか」に、代表・岩井雪乃と事務局長・目黒紀夫が参加・登壇してきました。このワークショップでは、野生動物の保護活動にNPOとしてかかわっている人たちと、それを研究テーマに調査をしている学生や研究者とが自分たちの活動について発表をして、そのあとで研究者がどのように実際の保護活動にかかわっていくべきなのかについて会場全体で議論をしました。とはいえ、NPOの立場から発表をした3人の人たちは活動の一環として調査・研究をしていますし、目黒も含めて研究者として発表をした3人もNPOの一員として国内外で活動をしています。その意味では、コメンテーター(岩井および京都大学総長の山極寿一さん)も含めて、登壇者の全員が調査研究と実践活動の両方に携わっていることになります。

写真1:会場の様子

当日は、それぞれの登壇者が自分自身の経験を語りました。目黒の場合であれば、調査研究を行っているケニアと支援活動(セレンゲティ・人と動物プロジェクト)を展開しているタンザニアとでは人びとを取りまく状況が大きくちがっているため(困窮度合いのちがい、外部支援者の金銭力のちがいなど)、なかなかタンザニアと同じようにケニアで支援活動を実践できないことが説明されました。また、岩井はコメントとして、青年海外協力隊、大学院生、大学教員と変わってくるなかで、自分の立ち位置がいかに「研究者(学術論文の生産を第一とする人)」と「実践家(地域に役立つことを第一とする人)」とのあいだを揺れ動いてきたのかを説明し、NPOと研究者が必ずしもまったくの別物ではないことを説明しました。

写真2:コメントをする岩井

そうした話のうえで、地域における保護活動に役立つ知識・求められる研究者の役割とは何なのか、調査・研究で得られた情報をどのように地域の人たちに伝えるべきなのか、そもそも研究者を取り巻く環境がこの数十年のあいだにどれだけ変わってきたのかといった点が総合討論のなかでは議論されました。数十年前であれば研究者は研究だけやっていればよかったし、アフリカの人たちが研究者にたいして援助や開発を求めることなどなかったといいます。それが現在では、研究者であっても何かしら地域や現場で役に立つことを求められるようになってきました。そうしたなかにあっても、研究者である以上は学術研究として信頼のおける確かな情報や技術を提供することが大切だという意見が出るいっぽうで、研究者であっても常に客観的な判断や意見を提供できるとは限らないとして、社会の複雑な状況を一歩引いた地点から分析することの意義もいわれていました。

写真3:質問に答える目黒

岩井と目黒はセレンゲティ・人と動物のプロジェクトというかたちで野生動物保護にかかわっていますが、今回のワークショップはそうした自分たちの経験を見つめ直すよいきっかけになったように思います。まだまだこれからもチャレンジは続くと思いますが、ちがうフィールドで活動している人たちとの交流を糧にこれからもがんばっていきたいと思います。