『アフリカを食べる』 松本仁一=著

紹介:黒崎 龍悟

異なる文化に接するときに、大きく関心をひくもののひとつが「食」であることは、まず間違いないだろう。本書は朝日新聞の記者であった筆者が、現地での取材をもとに同新聞に連載していたコラムをまとめたものである。

本書は、筆者が「食を通じて私が出会ったアフリカ、そしてそこに住む人々についての本」(あとがきより)と位置づける言葉どおり、広いアフリカのさまざまな地域の「食」を、その土地の文化の視点に立って紹介することに主眼が置かれている。しかし、それだけではなく、「食」をとおして浮かびあがる政治的な問題等も提起し、いろいろな側面からアフリカに対する理解を深めるきっかけを提供している。

そういうわけで、読み進めると「食」の背後にあるさまざまな事情に思いを馳せないわけにはいかなくなるものの、それとは別に、とれたての魚の踊り食いや、牛肉スープのぶっかけ飯、脂のしたたるヤギのホルモンなど、やはり食事を描写する部分には食欲をかきたてられる。最近では日本でもエスニック料理のひとつとしてアフリカの料理をだしてくれる店も増えつつあるようだが、地域社会のなかに身をおいて「食」にふれることの楽しみを思い起こさせてくれる本でもあると思う。