『ドリトル先生アフリカゆき』ヒュー・ロフティング=作/井伏鱒二=訳

紹介:黒崎 龍悟

本書はロフティングによるドリトル先生シリーズの第一作である。児童文学として有名なこのシリーズは、ロフティングが第一次大戦で兵役に行っていた時,本国に残している子どもたちのために書いた話が基になっているという。

イギリスの片田舎に住む町医者ドリトル先生は、動物をかわいがり過ぎることが災いして医者を廃業せざるを得なくなっていた。生活に困窮する日々を送っていたところ、ひょんなことから飼っていたオウムに動物語を学ぶことになり、ドリトル先生は世にもまれな動物の言葉がわかる獣医となる。あらゆる動物から絶対的な信頼を得るようになった彼のうわさはアフリカ大陸にも届き、ある日アフリカのサルの国で大流行している病気を治してほしいという依頼が舞い込んでくる。こうしてドリトル先生のアフリカへの旅が始まるのである。

ドリトル先生は方々に借金をして、選りすぐり(?)の動物たち,ブタ・イヌ・オウム・サル・フクロウをお供にしたがえて旅立つ。旅の途中では、牢屋から脱出したり、断崖を渡ったり困難な場面にたびたび遭遇するが、動物たちの機転と協力でくぐりぬけていく。果たしてドリトル先生は無事にサルたちの病気を治し、帰国の途につこうとするのだが、船はアフリカに着いたときに壊れてしまい、また借金を返すあてもないままだった。そこでお世話になったサルたちは知恵を絞り、ドリトル先生に「オシツオサレツ」という珍獣を連れて帰るようにと持ちかけるのだが・・・

動物と話ができるというのは特殊な能力だが,それだけで動物たちとの協力関係が築けるわけではない。多くの動物たちをひきつけるドリトル先生の人柄も読みどころのひとつだろう(なお,アフリカの人たちについての描写には適当ではない部分があるが,それは執筆した時代背景(19世紀末)からして仕方がないのかもしれない)。

本書は全体としてとてもおもしろいアフリカへの冒険譚である。ぜひ,一読されたい。

書誌情報

単行本: 252ページ
出版社: 岩波書店
ISBN-10: 4001140217
ISBN-13: 978-4001140217
出版年: 2000年(初版は1951年)