『アクション別フィールドワーク入門』 武田丈・亀井伸孝=編

紹介:黒崎 龍悟

『アクション別フィールドワーク入門』には,アフリック会員の5名が寄稿しています。
この本はフィールドワークの実際について紹介しています。研究成果を得るためにフィールドワークをおこなうには、透明人間のような単なる「観察者」となることはできません。フィールドワーカーは現地の人間となにがしかの関係を持ち、それをもとにさまざまな情報を得ることになります。その過程では、時に現場で遭遇するさまざまな出来事への関与も迫られます。これまでのフィールドワークに関するガイド本は、そのようなフィールドワークの実際にあまり触れずに、情報の収集や分析の手法についての説明に重点をおいてきました。この本では,論文には直接あらわれない「観察者」の枠をはずれた行動に注目し,それがときにフィールドワーカーの調査の進め方や対象社会の理解の仕方にも影響する様子を紹介しています。

アフリック会員の執筆部分:

1-1 遠い世界にふみだす: エチオピアの野生動物保護区におけるフィールドワーク
……西崎伸子(18-31頁)
2-2 政治論争にまきこまれる: ボツワナにおける開発政策と先住民運動の渦中で
……丸山淳子(63-75頁)
3-2 研究成果を分かちあう: カメルーンの森とバカ・ピグミーの未来
……服部志帆(94-107頁)
6-2 日常生活を手伝う: タンザニアでの農村開発をめぐる出来事から
……黒崎龍悟(188-199頁)
7-1 病と共存する社会をのぞむ: エチオピアのHIV/AIDS予防運動
……西 真如(204-217頁)

『社会と調査』(一般社団法人社会調査協会) 2号の98頁に書評が掲載されましたので,以下,その一部を引用して紹介します。

「アクション別フィールドワーク入門」はフィールドワーカーが繰り出すさまざまなアクション,すなわち狭い意味での調査(情報収集)に収まりきらない行動の数々を報告したものである。 その狙いは,「論文になるときにはほとんど割愛されてしまうこうしたアクションのなかにこそ,フィールドに関わる者の現実の姿がある」(1頁)点にある。興味深いのは,論者によって大きく異なるフィールドワークへの構えが読者へと伝わってくる点である。・・・フィールドワークは「どこか向こう」のことを調べる営みを通じて「いまここ」の認識へと立ち返る試みであることを,ここでとりあげた2冊(※)の本は教えてくれる。「いまここ」から切り離された「どこか向こう」の世界を凝り固まった“専門的”方法で解析するといった社会調査が量産されつつある現在,ここで取り上げた2冊こそが社会調査論のテキストにはふさわしいと私は思う。

引用元:石岡丈昇. 2009.「書評: 『フィールドワークへの挑戦』;『アクション別フィールドワーク入門』」『社会と調査』(一般社団法人社会調査協会),2 (2009/03): 98.

※注:引用させていただいた書評内では,『フィールドワークへの挑戦』(菅原和孝編)と『アクション別フィールドワーク入門』が併せて紹介されています。