『高校生のためのアフリカ理解入門』 秋田市立秋田商業高等学校ビジネス実践・ユネスコスクール班=編

紹介:浅田 静香

本書は、秋田商業高校の生徒が、「アフリカ理解」というテーマに沿って1年間にわたって研究・実践してきた内容をまとめた本である。同校では、総合的な学習の時間の一環として、アフリカでのボランティア経験者による講演、アフリカへの物資支援、生徒4人と教員2人によるウガンダ訪問などの活動に取り組んできた。

本書は5章構成となっている。第1章では、ウガンダで実施されたスタディツアーの報告と生徒の感想が紹介されている。第2章では、アフリカにおけるJICAボランティア経験者による出前講座の書き起こしと生徒の感想文が計4回分掲載されている。第3章では、アフリカ各国で開発援助の活動に取り組んできた日本人4人による寄稿が紹介されている。第4章では、ユネスコスクール班の生徒が一般向けのイベント2箇所でおこなった研究発表の報告と、班長と副班長による1年間の活動の感想が掲載されている。第5章では、スタディツアーに同伴した教員1人と、同校のアフリカ理解プロジェクトに携わり、アフリカへの訪問暦がある教員2人の研究内容が報告されている。

本書の特徴は、高校生の率直な感動や発見が随所で紹介されている点にある。はじめての海外旅行でウガンダへ行った高校生が、それまでの先入観を覆されたり、新しい考え方を発見していく様子が書かれている。たとえば、レストランでオーダーしてから食事が出てくるまでに1時間以上かかるのに最初は驚いたようだが、しだいに「ンポランポラ(ゆっくりゆっくり)」と流れるアフリカの時間の使い方を実感し、適応していった。またひとりの生徒は、乗り合いバスのなかでウガンダ人が初対面の人とでも旧知の友のように話すのを見て、自身も小さいころは隣の知らない子とも昔からの友達のように遊んでいたことを思い出し、ウガンダ人の温かさを感じたという。

私がこの本と出会ったのは、昨年度、ある高校へ出前授業に行ったときのことだった。受入れ先の高校が、事前学習としてこの本の一部を生徒に読ませていてくれた。

紹介者自身の高校生のころを振り返ると、地理の授業ですこしは触れられるが、アフリカのことを遠い世界と思っていたため、近年の高校におけるアフリカへの関心の高まりや、高校生のあいだからアフリカへ行く機会があること(まだ一部だろうが)をうらやましく思う。また、アフリカと日本を頻繁に往復するようになって忘れかけていた、初めてアフリカへ行ったときに感じたさまざまなカルチャーショックを、本書にリマインドしてもらったように感じる。

書誌情報

出版社:アルテ
発行:2010年10月
定価:1,600円+税
B6版 188頁
ISBN-10: 443150081
ISBN-13: 978-4434150081