『グレートジンバブウェ—東南アフリカの歴史世界』 吉國恒雄=著

紹介:黒崎 龍悟

高校時代、世界史や日本史を学ぶのが苦痛だった。それが歴史というよりも情報の羅列にしか見えなかったからだ。その後、10年以上たって、アフリカ(タンザニア)でのフィールドワークをするようになると、歴史アレルギーが和らいできた。きっかけは村の古老たちとの濃密で長い会話だった。彼らの語りは、時に壮大な物語で、時に滑稽なエピソードに満ち溢れている。村に残る古い行政文書や写真なども探しだし、それと古老によって語られた歴史とを照合しながら、現地の歴史を再構成することの面白さを知るようになった。その時代に生きた人々の視点に立った「歴史」の本を改めて読みたいと思うようになったのは、こういう理由がある。

本書はこの期待を裏切らない内容だ。南東部アフリカ、リンポポ川近くに栄え、ジンバブウェ=「石の家」の名のもとになった巨大な遺跡(エンクロージャー)の謎を解くところから話は始まる。「暗黒大陸」と呼ばれたアフリカの都市国家や小社会が、外部世界とのたゆまぬ接触のなかで生成/発展/衰退してきたプロセスが次から次へと展開していく。このダイナミズムのなかで中世日本とアフリカの意外なつながりも見えてくる。

舌をかみそうな固有名詞が覚えきれないほどでてくるが、実に人間臭い話が交えられていて、それらは歴史アレルギーを刺激するというよりも社会の広がりやリアリティを示すものとして感じられる。「アフリカは世界史の玄関が一つではないことの証明」(あとがき)という言葉どおり、読者を新たな歴史観へと導いてくれるはずである。

出版社: 講談社
発行:1999年10月