テレビ出演の撮影秘話

岩井雪乃

テレビ東京「世界ナゼそこに?日本人」に出演

2020年3月16日に、ゾウプロジェクトの追い払い活動がテレビ番組で紹介されました!ゾウの凶暴さを伝える資料映像も盛り込まれて、被害の深刻さと追払い現場の緊迫感を伝えるよい番組となりました。放送後は、私の高校時代の先生や古い友人など、懐かしい人から連絡があったり、知らない視聴者から対策のアイデアをもらったり、高校生から応援メールをもらったり、たくさんの反響がありました。テレビの影響力はやはりスゴイです!視聴率8.9%だったそうで、これは約1千万人が視たことになるそうです!

ここでは、タンザニアでの現地撮影秘話を紹介します。

二転三転、四転五転

オンエアにこぎつけるまで、実は何度もこの企画は頓挫しそうになったのです。はじまりは、2019年1月、番組制作会社から職場に電話がかかってきました。ネット検索で私を発見したようです。私は、「ゾウ獣害問題を多くの人に知ってもらえる機会だから、ぜひ番組にしてもらおう!」と、積極的に協力しました。一度インタビューを受けた後、企画書をテレビ局にあげることになりました。

撮影の様子

しかしその後は、二転三転の連続。4月にボツになったとの連絡→5月に復活採用の連絡→6月にやはりボツになった連絡→そして7月になって再復活して実施が決まる・・・という、紆余曲折ぶりでした(笑)。こんな過程だったので、もはや私は途中から「来ても来なくても、もう、どうでもいいや」という気もちになっていました。7月に決定した時も、「今からの準備では、撮影許可などが取れなくて実現できないのでは?」と半信半疑でした。もうテレビ撮影のことは気にせず、自分は自分で粛々と渡航準備を進めていました。その後、制作の方々は急ピッチでロケ準備を進め、驚きの底力で9月に1週間の密着ロケが実現したのでした。タンザニア人並みの土壇場力を見た気がしました(笑)

さすが「もっている」撮影クルー

私にとっての番組のメイン内容は、「ゾウ被害の深刻な実態」と「村人が自分たちで工夫をこらして対策(追い払い)をしている力強さ」でした(バラエティ番組なので、制作側は違う意図もあったと思いますが・・・)。1週間しかない撮影期間で、視聴者に訴えるよい映像が撮れるのか?私は不安でした。過去の同じ時期に1ヶ月近く滞在しても、ゾウが1度も村に来なかった年もあったのです。また、ゾウが来ても、夜ではオンエアに使えるわかりやすい映像になりません。明るいうちにゾウが来ないと「使える映像」にならないのです。ゾウは基本的には夜に畑を襲いにくるので、昼の撮影チャンスは、私だって過去5年間で2日しかありませんでした。

ゾウが村から出ていくところ。ゾウを追い払う過程をバッチリ撮影できた

そして撮影が始まってみると、なんと7日間の滞在中、3日も昼間にゾウが村に来たのです!なんという高確率でしょう!バッチリとゾウ獣害現場を撮影することができました。さすが、数々の海外ロケで名場面を撮影してきたクルーのみなさん、驚くべき強運の星をもっているのでしょう。

謎のじんましん

ロケ中、私は、謎のじんましんが出ました。ちょうど撮影日程が半分過ぎた日で、夜、ベッドに入ると手のあちこちがかゆいのです。虫刺されかと思ってかゆみ止めを塗ってみましたが、まったくおさまりません。結局、一睡もできないまま朝を迎えました。こんなことは、長年タンザニアに通っていて初めての経験でした。

村に近づくゾウを探しているところも背後から撮られている

翌朝、このことを話すと、撮影のみなさんが顔を見合わせて申し訳なさそうな様子になりました。「実は、私たちのいく先々で、取材対象の方が体調を崩すんですよ・・・申し訳ありません」とのこと。常にカメラで撮影されていることが、知らず知らずの間にストレスとして溜まって体調不良に至ってしまうようです。私も自覚していなかったのですが、撮影されるストレスと、撮影をよいものにしなければならないという責任を、強く感じていたのだと思います。幸い、朝起きてからはかゆみはおさまり、その後は元気に過ごすことができました。

オンエアも一波乱

9月に帰国した後は、いつオンエアされるのかとワクワクしていましたが、いっこうに連絡がありません。問い合わせると、「局の都合でいつオンエアできるかわからない」と言われました。局として、あそこまで費用と労力をかけて撮影したのに、お蔵入りの可能性があるとは!視聴率が取れるかどうかが判断基準だそうです。テレビ業界の厳しさに驚きました。しかし、この時には、私はすでに何度も浮き沈みを経験していたので、流れに身を任せてクルーのみなさんの強運にかける気もちになっていました。そして、撮影から半年後の2020年3月になって急にオンエアが決まり、番組再編の直前に滑り込みセーフで放映されたのでした。

今回のようなバラエティ要素の強い番組への出演は、人によっては嫌う方もいます。過度な誇張がある点は否めないです。しかし、今回の番組に関しては、プロデューサーさんが、しっかりとゾウ獣害問題の大きさを理解してくれて、「ゾウの危険さ、住民が置かれている深刻な状況とどうしようもなさ」「それを乗り越えようとする人びとの力強さ」といったものを、かなり伝えてくれたと思っています(現実のほうが、もっともっと厳しいので、まだ足りなかったですが)。今でも学生から「先生のこと、テレビで見ました」と言ってもらったりしていますので、問題を広く知ってもらう意味で、影響力に感謝です。