DV被害を受けた女性の例

ソコニイルカプロジェクトでは、公的機関である福祉センターと提携して、DV被害を受けた女性の支援もしています。アラダ市の福祉センターには、DV被害を受けた女性が相談に訪ねてきます。福祉センターは配偶者を呼び出して、解決するように話し合いの場所を持ちますが、被害を受け、村から逃げてきた女性は、アラダ市周辺に親戚や友人がいないと寝泊りする場所がありません。私たちはそんな女性に滞在場所を提供しています。

今日は、施設に滞在したある女性の話をします。彼女はトーゴ出身の女性で、商売でベナンに来た時に今の夫と出会い、引っ越して来たのだと言います。前のパートナーとの間に一人子どもがいて、今のベナン人男性との間に二人の子どもがいます。彼女は夫の家で3人の子どもと住んでいましたが、夫には他にも女性と関係ができ、彼女のことを疎むようになりました。食事代を与えなくなっただけではなく、彼女が商いをして自分で稼ぐことも禁じたのです。子ども達を食べさせていくため、女性は村の知り合いに相談し、200フランCFA(20円ほど)を借りて、販売用の薪を与えてもらいました。しかし、その相談相手と夫が不仲だったため、夫は非常に怒りました。そして家で彼女に暴力を加えました。その後も生活費を与えられなかった彼女は、村長に相談しに行きました。すると、村長に注意された夫は更に怒り、彼女の首を絞めました。村長がそれを止め、彼女を病院に連れて行くと、治療費が10,000フランCFA(2000円ほど)かかりました。家に帰ると、夫は治療費が高額だったことに更に怒り、ナイフを出して彼女を殺すと脅しました。そこで、彼女は家を逃げ出し、福祉センターにやってきたのでした。彼女は5ヶ月の妊娠中でしたが、一度も検診を受けさせてもらったこともありませんでした。

 

逃げてきた女性

福祉センターが仲裁日として決めたのはその10日後だったため、現地NGOのミドフィでは、彼女と一緒に家を出てきた二人の子どもに寝床と食事を提供しました。また、施設には髪結いの店舗があるため、それも利用してもらいました。彼女が望むことを聞いたところ、彼女は夫が暴力をふるわなくなること、生活費をちゃんと与えるか、彼女が働いて生活費を稼ぐことを許可して欲しいと言いました。

話し合いの当日、福祉センターは夫を呼び出し仲裁に入りました。その結果、夫は彼女に二度と暴力をふるわないこと、彼女に生活費を渡すこと、子ども達を学校に行かせること、彼女に妊婦検診を受けさせることを誓約し、署名しました。福祉センターにおけるこの仲裁は法的効力を有し、破ると裁判において夫を訴えることが可能になります。その誓約のもと、彼女は夫の村へと帰っていきました。数ヵ月後に追跡調査をした際、彼女は夫からの暴力は止んでいると言っていました。

ベナンは法律上は一夫一妻制ですが、一夫多妻の文化が強く残る国です。夫方居住婚なので、自分の親族が近くに住んでいない場合、妻の立場は脆弱になりがちです。DVは様々な文化的な要素の複合の中で起こっていますが、このように一つ一つのケースを受け入れながら考えることで、私たちにどのような支援ができるのかを考えたいと思っています。

現地NGOミドフィの施設