女性たちへの少額貸付事業を開始しました

 

これまで、少女たちへの職業訓練をおこなってきましたが、新たに経済的に困難な女性の収入向上を目指した少額貸付事業(マイクロファイナンス)を開始しました。

 

2021年4月下旬より、4名の女性に各5万CFA(=約1万円)を貸出し、食品や日用品の販売のための資金を貸出しています。毎月1万CFA(=5000円)を返済してもらう約束をしています。

 

家庭内で暴力を受けた女性や経済的に苦しい女性から、少額の貸付をしてほしいという依頼は以前からありました。しかし、私たちNGOに十分な経験とノウハウがないため、2020年7月頃より情報取集と事業開始にあたっての準備をしてきました。現地のスタッフにマイクロクレジット機関主催の講習に参加してもらい、貸出希望の女性の家庭事情や経済状況を聞き取ってもらい、マイクロクレジットの仕組みを知るとともに、女性たちにどのような助けが必要かを話し合ってきました。

 

ベナンには、複数の大手マイクロクレジット機関があります。これらの機関の貸し出し期間は、1年間で主に女性への小商いを対象とし、最初は10~20万CFA(=約2~4万円)までを、その後は50万CFA(=約10万円)までを貸し付けるというものです。しかし、これらの大手機関から貸付を受けるには、最初に貸付金額の12〜18%の保証金を準備する必要があったり、年利10%程度の利息を支払わなければならなかったりすることから、現状困難な状況にある女性にとってはハードルが高いです。さらに、返済ができなかった場合には、親族や警察も巻き込むといった羞恥心に訴えるような方法で返済を迫ることもあるそうです。これらの情報を元にどのような支援方法があるのかを考えてきました。他の貸付機関からお金を借りてもらい、保証金だけ私たちNGOで負担するといった方法も考えましたが、女性たちが返せなかった場合には、NGOもリスクを負うことになります。そのため、彼女たちに返済する習慣をつけてもらうため、まずは私たちのNGOから直接貸し付けを行うことになりました。

 

小商いの様子:服、サンダルなど生活雑貨が並ぶ   

 

貸付をした4人の女性たちの紹介をします(以下全て仮名です)。ガンデさんは39歳で4人の子どもがいます。夫と暮らしていましたが、若い女性のところに行ってしまったとのことです。彼女は夫に戻ってきてくれるように親族を通して調整しましたが、残念ながら叶いませんでした。それからここ2年はとても苦しい生活を強いられています。今は、公務員から洗濯を請け負ったり、小さな土地で畑仕事をしたりしていますが、4人の子どもを養うために、調味料やサンダルなどの小物を販売して現金収入を増やしたいと、NGOにやってきました。

二人目のソランさんは、40歳で3人の息子がいます。夫は2人の妻を残し病死しました。夫の遺産を全て夫側の親族がとってしまったため、第二夫人と法的な手段を探していましたが、第二夫人も間もなく亡くなってしまいました。そこでソランさんはアラダ市に移り住み、化粧品などの販売を始めました。3人の子どもたちを一人で養育していくために、仕事を少しでも拡大したいと言っています。

 

三人目のイネさんは29歳で娘が一人います。彼女には夫がいましたが、家庭を顧みないことや女性関係を理由に離婚をし、今は部屋を借りて娘と二人で暮らしています。彼女の母親が時折助けてくれるそうですが、携帯電話のチャージを売る商売しかできておらず、生活が苦しいと言います。イネさんは、水石鹸の製造の経験があるため、貸付金を用いて水石鹸の製造と販売をすることになりました。

 

最後のシャンさんは、30歳で二人の息子がいます。元夫が、他の女性を好きになったことを理由に離婚を迫ったため、現在は離婚し、再婚をしています。現在の夫は大工の仕事で市外にいるため、週末だけ彼女の元に帰ってきます。しかし、夫の収入ではシャンさん親子を養うことができず、商いを始めるための資金を出す余裕もないため、彼女はNGOに支援を求めました。シャンさんは、朝ごはんの販売や、厚揚げととうもろこしの練ったものの販売などを始めました。

 

4人の女性全員が、子どもを抱え離婚を経験しています。ベナンでは文化的に法律婚をする人が少ないため、離婚や死別した際に女性は経済的に脆弱な立場に立たされる傾向にあります。日用品の販売といった商売などをするしかなくなりますが、特別な技術はいらないものの、始めるにあたっては初期費用がかかります。そのため、お金を出ししてくれる人がいない場合、商売を始めることは簡単ではありません。ソコニイルカでは、まず少額を貸し付け、彼女たちの商売の状況をみながら返済をしてもらいます。今のところ全員の女性が毎月の返済をしてくれています。彼女たちが商売を軌道にのせ、お金返済することができれば、他の機関からより多くの額を借入することも可能になるかもしれません。これから彼女たちの商いが軌道にのるかドキドキしているのも事実ですが、どのようにすれば商売がうまくいくのか、いかないのかを私たちも学びながら、大手の機関ではできないフォローをしていきたいと考えています。

 

小商いの様子:買い物客で賑わう市場