第63回アフリカ先生「いまづ環境学公開講座」(兵庫県立西宮今津高校)報告

「タンザニア、国立公園周辺における野生動物保護政策と民族文化」 (2011年11月14日 「自然環境と人間」)

藤本 麻里子

11月14日(月)の2限目、9:40〜10:30に、兵庫県立西宮今津高校で『自然環境と人間』の授業をさせていただきました。私の授業のタイトルは『タンザニア、国立公園周辺における野生動物保護政策と民族文化』でした。10名ほどの生徒さんと2名の先生がたに聞いていただきました。

私が調査しているタンザニアのマハレ山塊国立公園における野生チンパンジーの研究と、その地域の先住民族であるトングウェの人々の民族文化についてお話させていただきました。国立公園ではチンパンジー観察を目的としたエコツーリズムが盛んで、たくさんの観光客が訪れます。観光客が訪れることは、タンザニアの国立公園公社にとっても、観光業に従事する地元の人々にとっても喜ばしいことです。しかし、人と生物学的に最も近い生物であるチンパンジーには、人からのウイルス感染の危険があります。感染源が人間だと断定されたわけではありませんが、チンパンジーの間に病気が流行し、多数の個体が死亡する事態も何度か起こっています。チンパンジー観察においては、様々な観察ルールを守ることが重要です。野生動物の持続的な利用法として進められてきたエコツーリズムによって、チンパンジーが悪影響を受けることは避けなければなりません。

また、国立公園内に人が居住できないという規定により、先住民族であるトングウェの人々が他地域に強制移住させられました。決して大きな民族集団ではないトングウェの人々にとっては、他民族との混住がその民族語や民族文化の継承を困難にしている側面があります。生物多様性と文化多様性の保全はともに重要な課題です。

生徒さんからの質問などを受け付ける時間が取れず残念でしたが、チンパンジーの映像、トングウェ語の民謡の音声や伝統儀礼の映像などには、皆さん真剣に見入ってくれていました。野生動物の保護については、日本でも関心が高いですが、文化多様性の保全についても理解を深めてもらう機会になっていればと願っています。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。