第55回アフリカ先生「いまづ環境学公開講座」(兵庫県立西宮今津高校)報告

「絶滅の危機に瀕する大型類人猿:野生チンパンジーの現状」 (2010年10月28日 「生物Ⅰ」)

藤本 麻里子

兵庫県立西宮今津高校の生物Ⅰの授業で、アフリカ先生を実施しました。私の研究対象である野生チンパンジーについてお話しました。まず、哺乳類の中で私たちヒトもその一員である霊長類とは、どんな特徴を持った生物なのかをお話しました。また、霊長類の中でも特にヒトに近縁な大型類人猿は、他の霊長類とは異なるどんな特徴があるのかを紹介しました。昨今テレビでもよく目にするチンパンジーですが、野生のチンパンジーがアフリカのどこに住んでいるのか、彼らを取り巻く状況がどのようなものかをお話しました。

チンパンジーは残念ながら現在絶滅の危機に瀕しています。野生のチンパンジーにとって脅威となっているのはどんなことだと思いますか、と生徒さんたちに尋ねてみると、森林伐採などの環境破壊という答えが寄せられました。また、ペットのするための捕獲という回答をしてくれた生徒さんもいました。

事実、森林伐採による生息地の破壊や、商業目的での捕獲や密猟もチンパンジーにとって大きな脅威です。それらに加えて、病気の流行や食用としての捕獲も大きな問題です。病気の流行については、ヒトと遺伝的に近いチンパンジーはエコツーリズムの推進によってヒトとの接する機会が増えることでヒトからの病気の感染というリスクがあること、それらの危険を回避するためにチンパンジーを利用したエコツーリズムには、様々な規制が設けられるようになったことなどをお話しました。主に、私が調査しているタンザニア連合共和国のマハレ山塊国立公園で講じられている対策を紹介しました。

またアフリカ諸国の中には、大型類人猿を食用に利用する地域や人々がいます。また、国の政情不安により、それら野生動物の肉に頼らなければ生きていけない人々もいます。大型類人猿の保護には様々な要因や問題が複雑に絡み合っており、答えは一つではないことを理解してもらえたら、私の授業は成功といえるかもしれません。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。